余裕綽々 ページ16
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デスクに戻って、仕事を始めても
全く集中できない。
それは櫻井のせいで。
一昨日の凜の言葉を思い出した。
『アンタをモノにしたいって本気で思うなら
またキスされたり、話されたりするでしょ』
って。
こういうこと？
凜が言っていたのはこういうことなの？
ってことは、櫻井は本気で私を？
だけど、櫻井に『試してみる？』と聞かれて
｢いいよ｣と言ったのは、
何も考えず、口から出た言葉で。
それは私が、櫻井を好きってことで。
キスも、付き合いも、受け入れたのは
私も櫻井が好きだということで。
私は未だ、私の気持ちが分からない。
本当にいいの？櫻井と付き合っていいの？
そう、自分に問いかけてみても
もうあとには引き返せなくて。
これが、凜と櫻井の言った“お試し”という事？
こんな、曖昧な気持ちのまま
櫻井とそういう関係になってもいいのか。
それは櫻井に対しても失礼じゃないか？
グルグルと頭の中で考えてたら、
右肩に重みを感じて振り返ると
｢ただいま｣
櫻井が立ってた。
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｢あ…お、かえり？｣
｢ただいまとかおかえりっておかしいだろ(笑)｣
｢櫻井が言ったんじゃん｣
｢いや、ツッコミを待ってた｣
｢…なにそれ｣
櫻井の余裕綽々な感じにムカついた。
私はこんなにモヤモヤグルグルしてるのに。
｢え、怒った？｣
｢怒ってない｣
｢怒ってんじゃん｣
私の顔を覗き込む櫻井と目が合う。
｢ここ会社だから｣
｢そんな真面目だったかよ、A｣
｢いいから仕事してよ｣
｢はいはい｣
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櫻井の左手が私の頭の上で
ぽんぽん、と跳ねた。
それだけで私の心臓はバクバクしてて。
あれ？私、ホントに櫻井が好きなの？
って。またその繰り返し。
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作者名：湊 | 作成日時：2018年7月18日 0時
