KOOL (ページ14)

今日:13 hit、昨日:1 hit、合計:20,999 hit

大切な人ページ14

side.S

.

.

.

女からチヤホヤされることは慣れていた。

俺に色目を使って近づいてくる女には

一晩だけのカンケイを持つことだってあった。

だけど、

Aには、そんな気は一切起きなくて。

それはアイツが俺に色目を使わず

“友達”として接してくれるからで。

俺にとって、彼女とかそういうんじゃなく、

大切な人の一人だった。

なのにいつからか、俺の無意識の内に

Aが男と話したり、

飲みに行ったり、彼氏が出来たと聞いたり、

そういう事にモヤモヤしていた。

無意識に、意識していた。

知らない間に、好きになってた。

それに気づいたのは、一年前。

Aに彼氏が出来たと知った時だった。

.

金曜日の夜。

Aに初めてキスした夜。

やってしまった、と思った。

気持ちを伝えず、身勝手に行動して、

だけどお酒の所為かほんのり赤いAを見て

俺の理性はぶっ飛びそうで。

キスをすれば止まらなくなりそうで、

ダメだと思いながらも、体は素直で。

止まらなくなる、と思ったら

Aに謝って、背を向けて帰ってしまった。

｢なにやってんだよ…｣

一人、部屋に帰るとこぼれる溜息。

｢はぁ…｣

ちゃんと、話さなきゃダメだ。

ずっと大切にしてきたのに

こんなことで壊したくない。

.

週明け、会社でAに会えば

また気持ちは高ぶって、

喫煙所で二人きりになれば

理性を抑えるのに必死で、

Aの困った顔を見れば

その肌に触れたくて、

また、キスをして。

｢試してみない？｣

そう言えば、Aの瞳が俺を捉えて

｢俺を｣

そんなキザな台詞を言えば

Aは頬を赤らめる。

可愛い、なんて言葉が

また口から漏れそうなのを堪えて

Aにキスをした。

｢…いいよ、試してあげる｣

そう言うAは

誘うように俺を見た。

甘く、苦いキス。

タバコの香りと、Aの香りが

鼻を掠めた。

.

.