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お試し ページ13
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私が喫煙所に着くと、
櫻井はもう既にタバコを吸っていて。
扉を開けて、櫻井の斜め向かいに立つ。
一本取り出して火をつけた時、
｢なぁ｣ と、櫻井の声が鼓膜に響いた。
｢…ん？｣
｢金曜のことなんだけど｣
｢…｣
｢ごめん｣
｢え？｣
｢いや、いきなりあんなこと｣
｢…｣
｢驚かせたよな、ごめん｣
｢…うん｣
暫くの沈黙。
一口煙を吸い込んで、また吐き出す。
｢なぁ｣
また、低く優しい声が鼓膜を揺らす。
｢ん？｣
櫻井が、煙を吐き出す。
｢試してみない？｣
トン、と灰を落とす櫻井の指は
男らしい骨ばった長くゴツゴツしてる。
｢なにを？｣
視線を上げると、櫻井と目が合った。
櫻井の真剣な瞳に
吸い込まれそうな黒い瞳に
動けなくなって。
｢俺を｣
近づく櫻井から、離れることが出来なくて。
言葉を発する前に、
爽やかな香水の香りと、タバコの苦い香りが
私の鼻を掠めた。
唇にまた、櫻井の熱が伝わって
甘く、苦く私の脳を揺らす。
突き放すことは出来なくて、
だけど、嫌だということもなくて。
そのまま受け入れた私は、多分きっと
櫻井のことが、好き。
そう、思った。
唇が離れて、空気を吸い込んで
｢…いいよ、試してあげる｣
そう言えば、櫻井の唇は
厭らしく妖艶に笑う。
誘うようなその瞳に、
私の頭はクラクラした。
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作者名：湊 | 作成日時：2018年7月18日 0時
