豆腐ハンバーグ ページ21
*
「そういえば彼方くん、そろそろライブだよね?」
「……うん、そう。よく覚えてたね」
お味噌汁を啜り、煮物のにんじんを口に運ぶ。うん、中々上出来だ。
先程Twitterで見かけたライブの情報を口に出すと、彼方くんは手に持っていたご飯茶碗とお箸をテーブルに置き、私に向き直る。
「その、ライブの話なんだけどさ、」
「?うん」
「Aも来たことあるから分かるだろうけど、ライブってめちゃめちゃ動き回るじゃん。歩きながら歌うとかでも結構体力使うしさ」
「うん」
「それで、筋トレして体力つけたり、その…ダイエット、とかしなきゃなんだけど」
あー、はいはい。何となく話の流れが分かってきた。言い訳をする子どものような表情で説明を続ける彼方くんの顔をじっと見つめる。
「俺最近まじで忙しくてさ、カップ麺とか出前とか吉牛とか、まあ適当なものしか食べてなかったのよ。時間も不規則だったし。そしたら、体重増えちゃいまして」
「…で、私に何をしろと?」
「……低カロリーのご飯作って頂けないでしょうか」
はぁぁぁと盛大に溜め息を吐くと、いやもうほんとごめんなさいと彼方くんは縮こまった。
「彼方くん。私さ、ちゃんとしたご飯食べてねって言ってなかったっけ。野菜食べてねーとかさ」
「……もうしわけない」
「別に意地悪で言ってるんじゃなくてね?彼方くんが体調崩したり、太っちゃったりしたら困るだろうなーっていう親切心から言ったつもりだったんだけどなあ」
「……すみませんでした……」
しゅんとなって更に縮こまる彼方くんは思っていたより反省してるみたい。まあまあ、お説教はこのくらいで許してあげよう。
「じゃあ来週はカロリー低めのもの作ろっか。それまで彼方くんは油っこいもの禁止ね。深夜にラーメンとか論外だから」
「はぁ!?「なに?」……分かりました」
ライブ終わったら家系ラーメンハシゴしてやる……と息巻く彼方くん。そういう生活してるから太っちゃうんだよ、とデコピンした。
*
とはいっても、私は正直あまりダイエット食なるものに精通していない。私も高校生の頃ダイエットをしたことはあるけど、当時は実家暮らしだったから食事は母にすべて任せていたのだ。
あの頃食べていたご飯は美味しかった。油や塩分は控え目で、それでもちゃんと美味しいご飯だった。……あれ、彼方くんにも食べて欲しいな。
『……もしもし、お母さん?ちょっと教えてほしいレシピがあるんだけど……』
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いつかのだれか。(プロフ) - 執筆お疲れ様でした。料理や登場人物の心理描写が好きで、ずっとお気に入り登録していた作品だったので更新されたこと・完結まで読めたこと、とても嬉しく思います。素敵な小説をありがとうございました。これからもお体に気をつけてお過ごしください🍛 (3月23日 0時) (レス) @page40 id: 0075fb22a2 (このIDを非表示/違反報告)
飛鳥(プロフ) - 少しずつ三崎さんのペースで回復していってください。また三崎さんの素敵な話が見られるのを楽しみに気長に待ってます。 (2020年9月20日 8時) (レス) id: 0edccb8a0c (このIDを非表示/違反報告)
つばさ - 無理せずにゆっくりでもいいので体調を良くしていって下さい! (2020年9月19日 21時) (レス) id: 46296c987b (このIDを非表示/違反報告)
三崎(プロフ) - しおさん» ありがとうございます!無理せず体調を治していきたいと思います◎ (2020年8月23日 19時) (レス) id: 83ba49b51f (このIDを非表示/違反報告)
しお(プロフ) - お知らせありがとうございます、どうか無理せず自分第一で暮らしてくださいね、こちらこそいつも素敵なお話をありがとうございました。早く回復しますように願ってます! (2020年8月23日 17時) (レス) id: 47ac21f61f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:三崎 | 作成日時:2020年3月22日 0時