信 ページ36
シンゴはただ、自分より大きな大人が泣いている姿を黙って見ていた。
顔をぐしゃぐしゃにして泣くタツの姿は、初めて見た。
だから、何と声をかけたらいいのか、あのシンゴでさえも分からなかったのだ。
「...タツ」
「...っぅ...っく...」
「...ありがとう」
「...っぇ？」
「俺の皿、守ろうとしてくれて、ありがとう」
「...」
シンゴが、先代から教えられた大切なことがある。
ー困った時、どうしたらいいか分からんくなった時、それでもその環境に感謝できる人間であれ
そうすればきっと、幸せになれる、と。
「皿なんか、いくらでもまた作ったるよ」
「...う、ぅ...ぐずっ...」
「タツのためなら、何枚だって焼いたるわ！」
「う、うっ...シンゴ...っ！」
「やから、謝らんで？タツはなーんも悪いないやん。俺の皿を守ろうとしてくれた、俺の気持ちを守ろうとしてくれた、それだけでありがとう、や。」
「う、うううっ...あ、りが...どぉっ...！」
「ちょーもぉー！そない泣くな！ちょっと待ってろ！」
シンゴは、トイレの個室に入って、トイレットペーパーを1ロール持ってきた。
「これで拭け」
「...」
「そんな目でみんなや、しゃーないやんか！別に汚いもんちゃうやろ、使ったわけちゃうし」
黙ってても涙と鼻水は出てくるので、仕方なくタツはシンゴの持っているトイレットペーパーを貰って鼻をかんだ。
「...リュウ」
「ん？」
鼻をかみ終えたタツが呼んだその名に、シンゴが反応した。
「俺の知ってるリュウと、今のリュウは...違うのかな」
「...なんで？」
「徴税人が言うたんよ...『これは王子の指示だ』って...」
それを聞いて、シンゴはほんの少しだけ顔を曇らせた。
自分の知っているリュウの姿、笑顔...思い出しても、そんなひどいことを指示するような人ではない。
「...分からん！」
「え」
「そんなん考えてても分からんやん？俺は、俺を信じる。俺が知ってるリュウは、アホで、いっつもふざけてて、でも真面目で真っ直ぐで、どんな時も笑ってる、太陽みたいな奴や。」
「...俺も、俺の中のリュウも、そう。」
「じゃあええやん！徴税人なんかより俺らの方がよっぽどリュウのこと知っとるわ！」
「...」
「自分が信じたいものを、信じたらええよ。」
タツには、その時のシンゴは、いつにも増して大人びて見えた。
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ゆめ(プロフ) - Shion さん» うわああめちゃくちゃ嬉しいですっ...！！読んでいただいて本当にありがとうございます！！！がんばります！！！ (2018年4月15日 8時) (
レス) id: ee8561c84e (このIDを非表示/違反報告)
Shion - ゆめさんの作品全部好きです(*´▽｀*)更新頑張ってください(^-^)/ (2018年4月15日 7時) (レス) id: f68d4998df (このIDを非表示/違反報告)
ゆめ(プロフ) - でんでんさん» お立ち寄りいただきありがとうございます！私もこの世界観好きで、書いててめちゃくちゃ楽しいです！ファンタジーは初で、上手くかけるか分からないですが、温かく見守っていただけたら嬉しいです(*´ω｀*) (2018年2月25日 8時) (レス) id: ee8561c84e (このIDを非表示/違反報告)
でんでん(プロフ) - エイトさんのわちゃわちゃした感じと作品の世界観の作り込みがめちゃめちゃ好みです！なんだかほのぼのするような雰囲気があって、かわいー！ってニマニマしながら読んでます。毎話更新が楽しみです！これからもゆめ様のペースで頑張ってください！応援してます！ (2018年2月25日 0時) (レス) id: ea6bd4582f (このIDを非表示/違反報告)
ゆめ(プロフ) - 黒雪アリスさん» いろんなジャンルの作品に足を運んでいただき本当に嬉しいですっ！！！！こちらこそコメントいただけて励みになります！！ありがとうございます！ (2018年2月17日 21時) (レス) id: ee8561c84e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆめ
| 作成日時：2018年2月17日 14時
