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9.日常 ページ10

ヒーローになりたい。

そう思ったのは、母を守るためでもあるし、焦凍を支えるためだ。
焦凍の父への恨みはきっといつか身を滅ぼすことになるかもしれないから。


「おい、攻撃が単調だ。ヒーローになるんだろ?」


『っ、』


肩で息をしながら、右手を前に出す。

父との稽古は大分慣れて来たが、私はまだ、焦凍よりも強くない。


『落ちろ』


父の上から水が滝のように流れ、それを父は炎で蒸発させた。


「なんだ?もう終いか?」


部屋の中は水蒸気でよく見えない。
そっと、手のひらに炎を収束させて剣を作った。まだ、父にはみせたことのない個性の使い方だ。


『お終いな訳、ない!!』


水蒸気が、水が父のいる場所を教えてくれる。
そこに剣を突き刺し、炎を放った。


「っ!?…なんだ、これは」


父はギリギリのところで避けて私に炎を浴びせた。
それを水の盾で防ぎながら、距離を取る。


「おい、それはなんだ」


『……私は、水と炎を操ることが出来る。それはただ単に放出したりとかじゃないってだけ』


「フン、……今日はここまでだ」


『ありがとうございました』


訓練場から出てから、焦凍とバッタリ会った。
焦凍は父と鍛錬することはなく、一人で行っているようだ。


『焦凍、おはよう』


「ん、おはよう」


二人で挨拶をしながら台所へ目指す。

焦凍の左の火傷はやはり治ることはなく今でも残っている。
もう本人はなんとも思ってないようだが、本当のところはよくわからない。


「朝練、終わったのか?」


『うん』


焦凍は少し顔を歪ませながら、聞いてくる。
正直なところ、私には父と鍛錬をして欲しくないのだろう。


「傷…」


そっと、焦凍の手が私の頰を触れた。


『血、出てる?』


「あぁ」


『そっか…あ、と……!?』


ペロッと頰を舐められて、カァッと熱が顔に集まった。
焦凍のこういう唐突なところは小さい頃からで、今も直っていない。


『なに、するの』


「舐めときゃ、治る」


『汚いから舐めちゃダメ』


「…?Aは汚くないだろ」


コイツは。

反論する気も失せて、ため息をついた。
天然というかなんというか。これだから、焦凍には沢山の悪い虫が付いてしまうのだろう。

これでも、学校では大変なのだ。


「A、怒ってるのか?」


『怒ってない』


「そうなのか?」


『いいから、ご飯食べるよ』


小学6年の春。
今日も朝は平和だった。

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設定タグ:ヒロアカ , 轟焦凍 , 双子   
作品ジャンル:恋愛
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おつきみ(プロフ) - ミリイ(灰崎信者)さん» えっと、それはステインさんが主役の小説ということでしょうか?それなら、ちょっと時間がかかるかもしれませんが、挑戦できたらしたいと思います! (2018年8月18日 12時) (レス) id: 927d00d57e (このIDを非表示/違反報告)
ミリイ(灰崎信者)(プロフ) - ステイン様の小説も書いて欲しいです (2018年8月18日 12時) (レス) id: 99fc6b4eef (このIDを非表示/違反報告)
おつきみ(プロフ) - 夢雪さん» 確かにそうですね。報告ありがとうございます!直しますね (2018年7月28日 14時) (レス) id: 927d00d57e (このIDを非表示/違反報告)
夢雪 - 兄弟というより兄妹なのでは…? (2018年7月27日 21時) (レス) id: a2e26e90a4 (このIDを非表示/違反報告)
おつきみ(プロフ) - みっちゃんさん» コメントありがとうございます!!続きも楽しみにしてくださるとは、とてもありがたいです!!頑張らせていただきますねp(^_^)q (2018年2月15日 7時) (レス) id: 927d00d57e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:おつきみ | 作成日時:2017年12月5日 23時

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