８.決意 ページ9
『しょーと…』
ピクリと焦凍が反応して、布団に潜った。
今日は焦凍のお見舞いに来たのだ。病室は驚くほど冷えていて、少しだけ身震いする。
「焦凍、大丈夫？」
姉がそう聞いても焦凍は布団から出てこない。
それは、焦凍なりの拒絶だったのかもしれないが。
「……ごめん、A。私、飲み物買ってくるから焦凍見てて？」
『うん…』
姉が病室を出て行った後に焦凍のベッドへと近寄って、椅子に腰掛けた。
布団から覗く焦凍の赤い髪が今は少しだけ醜く思えてしまう。
『しょーと』
「………なに？」
静かに、焦凍が応える。
まさか応えてくれるとは思ってなくて驚いてしまった。
『かお、……みせて？』
そう聞くと、焦凍は首を振ったのか布団の中でブルブルと動く。
『しょーと』
「……Aには、みせたくない」
『なんで？』
「だって……みにくい、から」
その言葉に息を呑んだ。
あぁ、違うんだよ。焦凍のそれは決して醜いものではないんだよ。
『…しょーと、わたしはみにくいなんて思わないよ。だって、しょーとはしょーとだもん』
「……ほんと？」
『うん！』
ゆっくりと布団から出て来た焦凍の顔には包帯が巻かれていてやはり痛々しい。
でも、目をそらすなんてことはしない。
そっと、焦凍を包み込むように抱きしめてから包帯の上からその左を撫でた。
「ん、くすぐったい」
『あ、ごめん。……しょーと、お母さんのことうらんでる？』
「ううん。べつに」
『そっか』
少しだけ嬉しくなった。
焦凍が母を憎むのはしょうがないことだけど、でも私は母を憎むことはできないから。
私は狡い人間だ。
「お父……アイツだけは許せない」
『そっか』
「そう言えば、お母さんは…どこ？」
そう聞く焦凍。
それと同時にガラッと扉が開いて姉が入って来た。
その手には私の好きなイチゴミルクと焦凍が良く飲む牛乳がある。
「お母さんは今、病院よ」
姉はそう言って、机の上に飲み物を置いた。
焦凍はそれを聞いて目を見開くと顔を歪める。
「なんで、だ」
『……お母さんは、心がやんでるんだって。だから、びょういんなんだよ』
「……ぜんぶ、アイツのせいだ」
「焦凍、お父さんを悪く思わないであげて？」
姉は悲しそうに微笑むとまた病室から出て言ってしまった。
姉が買って来た飲み物をジュッと飲みゴミ箱に捨てる。
『しょーと、わたし…ヒーローめざすから』
唐突に言った言葉は部屋の中で響いていた。
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おつきみ(プロフ) - ミリイ(灰崎信者)さん» えっと、それはステインさんが主役の小説ということでしょうか？それなら、ちょっと時間がかかるかもしれませんが、挑戦できたらしたいと思います！ (2018年8月18日 12時) (
レス) id: 927d00d57e (このIDを非表示/違反報告)
ミリイ(灰崎信者)(プロフ) - ステイン様の小説も書いて欲しいです (2018年8月18日 12時) (レス) id: 99fc6b4eef (このIDを非表示/違反報告)
おつきみ(プロフ) - 夢雪さん» 確かにそうですね。報告ありがとうございます！直しますね (2018年7月28日 14時) (レス) id: 927d00d57e (このIDを非表示/違反報告)
夢雪 - 兄弟というより兄妹なのでは…? (2018年7月27日 21時) (レス) id: a2e26e90a4 (このIDを非表示/違反報告)
おつきみ(プロフ) - みっちゃんさん» コメントありがとうございます！！続きも楽しみにしてくださるとは、とてもありがたいです！！頑張らせていただきますねp(^_^)q (2018年2月15日 7時) (レス) id: 927d00d57e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おつきみ | 作成日時：2017年12月5日 23時
