７.母親 ページ8
五歳になって、焦凍の特訓がより激しいものになった。
それを止めることができない私はまだ弱い。
『ねぇ、お母さん。しょーとは…』
隣でテレビを見ている母の背中に被さって母の肩に顔を押し付けた。
母は私の頭を撫でると「ごめんね」と呟く。
「寂しい？」
『ううん。お母さんがいるから』
嘘だ。
本当のこと言うと、とても寂しい。
焦凍が特訓を受けるようになってから、一人でいることが多くなってしまった。
時々、姉が遊んでくれるくらいだ。
『ねぇ、お母さん。……しょーと、大丈夫かなぁ』
「………」
『けがして泣いてないかなぁ』
「………」
『ひどいこと、されてないかなぁ』
「……ごめん、ごめんね」
母がくるりと私の方を向いて、ぎゅっと抱きしめる。
私は最低だ。
母を追い詰めてしまった。私がもっと違う行動をとればあんなことにはならなかったのかもしれない。
◇◆
その日の朝はとても胸騒ぎがしていた。
いつもより早い時間に起きた私は台所へと向かっていた。
一人の朝にはもう慣れてしまっていて、長い廊下を静かに歩く。
そんな時だった。
ガシャンという大きな音と焦凍の悲痛な叫びが聞こえてきた。
『しょーと！？』
また、なにかあったのだ。
きっと、父が……
そう思って、台所に入った時。
私は思わず固まってしまった。
『な、んで……お母さん？』
そこにいたのは父ではなく母で、床には熱湯が入っていたであろうヤカンが転がっていて、焦凍の周りは水浸し。
「う…ぐっ、ぁ」
焦凍は左目を抑えて、痛みを我慢しているようだった。
『しょーと！！！』
棒立ちの母をとりあえず無視して、焦凍へと駆け寄った。
熱湯をかけられた左は赤く腫れていて、目を背けたくなるほどに酷い。
何かしなきゃ。
個性で冷たい水を出し左目を抑えている焦凍の手の上から流し込む。
「ぐっ、ぁああ！！」
『ごめん、ごめんねしょーと。がまんして』
必死で焦凍の左を冷やしていく。
父や姉たちが台所に到着したのも気づかないほどに私は無我夢中だった。
気付いた時には全てが終わっていた。
焦凍は病院に運ばれて母は父と何処かに行ってしまった。
私は台所に座ったままで身体は冷え切っていた。
「A、お風呂、はいろう？」
そんな姉の言葉も耳に入らなかった。
ただ、残っていたのは。
自分に対する怒りと父への憎悪だった。
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おつきみ(プロフ) - ミリイ(灰崎信者)さん» えっと、それはステインさんが主役の小説ということでしょうか？それなら、ちょっと時間がかかるかもしれませんが、挑戦できたらしたいと思います！ (2018年8月18日 12時) (
レス) id: 927d00d57e (このIDを非表示/違反報告)
ミリイ(灰崎信者)(プロフ) - ステイン様の小説も書いて欲しいです (2018年8月18日 12時) (レス) id: 99fc6b4eef (このIDを非表示/違反報告)
おつきみ(プロフ) - 夢雪さん» 確かにそうですね。報告ありがとうございます！直しますね (2018年7月28日 14時) (レス) id: 927d00d57e (このIDを非表示/違反報告)
夢雪 - 兄弟というより兄妹なのでは…? (2018年7月27日 21時) (レス) id: a2e26e90a4 (このIDを非表示/違反報告)
おつきみ(プロフ) - みっちゃんさん» コメントありがとうございます！！続きも楽しみにしてくださるとは、とてもありがたいです！！頑張らせていただきますねp(^_^)q (2018年2月15日 7時) (レス) id: 927d00d57e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おつきみ | 作成日時：2017年12月5日 23時
