4.特別 ページ5
私は普通で焦凍は特別。
齢四歳にして知っていた事実。
焦凍は髪色から分かるように、きっと父と母の二つの個性を持っているはずで……でも、私は違う。
殆どが水色なのだ。
父にも母にもない水色の髪。
焦凍はこの髪が好きだと言ってくれるけど、私にとってこの髪は忌々しいものでしかない。
これさえ無ければ、私は特別でいられるのに。
何度、そう思ったか。
きっと、水色が白だったら焦凍のように特別でいられて、ヒーローになりたいと自信を持って言えたはず。
だけど、現実は。
焦凍の足枷になる存在で、ヒーローになりたいと言えないのだ。
『ごめんなさい』
ただ、そんな言葉しか出てこなかった。
目の前に立ったまま、動こうとしない父による威圧に怖気付きそうになる。
私は未完成品なのだ。
「…まぁ、いい。焦凍、鍛錬の時間だ」
「ぼくは行かない!!」
父はくるりと向きを変えて、焦凍の腕を掴む。
焦凍はそれから逃れようとドタバタと動くが、さすがに父には敵わない。
「いつ、個性が出てもいいように鍛錬しろ。そう言ってるはずだ」
ヒーローなんてものがなければ、こんなことにはならなかったのかな。
なんて、思いながら焦凍の方をじっと見ていた。
私は弱いから。
こうやって見ていることしかできない。そもそも、そんな奴がヒーローになれるなんてあり得ないのかもしれない。
「いや!!Aと遊ぶ!」
叫ぶようにして逃げようとする焦凍。
「言うことを聞け!!焦凍ォオ!!」
バシンッと嫌な音が周りに響く。
叩かれたのは焦凍ではなく私。間一髪のところで焦凍と父の間に滑り込めた。
焦凍が叩かれるのは見ていたくなかった。
身体が勝手に動いたといえば、誰かが頑張ったねと褒めてくれるのかな……
『……っ、』
「A!!」
痛む、左頬に涙が滲み出そうになるところを必死で耐えて笑ってみせる。
焦凍は泣きそうな顔で、私に「ごめん」と謝るが、そんなことどうでもいい。
『だい、じょうぶ!』
焦凍が無事でよかった。
だって、焦凍は特別なのだから。
「凄く、大きい音がし……A!?」
さっきの音で、母が様子を見に来てくれたらしい。
私の頰を見るとすぐに顔を青くして、駆け寄ってくる。
それを父は不服そうに見ていたが、直ぐにどこかに行ってしまった。
「…ごめん、ごめんねA」
なんで、私は謝られているのだろう。
お母さん、私は……焦凍を守ったんだよ。
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おつきみ(プロフ) - ミリイ(灰崎信者)さん» えっと、それはステインさんが主役の小説ということでしょうか?それなら、ちょっと時間がかかるかもしれませんが、挑戦できたらしたいと思います! (2018年8月18日 12時) (レス) id: 927d00d57e (このIDを非表示/違反報告)
ミリイ(灰崎信者)(プロフ) - ステイン様の小説も書いて欲しいです (2018年8月18日 12時) (レス) id: 99fc6b4eef (このIDを非表示/違反報告)
おつきみ(プロフ) - 夢雪さん» 確かにそうですね。報告ありがとうございます!直しますね (2018年7月28日 14時) (レス) id: 927d00d57e (このIDを非表示/違反報告)
夢雪 - 兄弟というより兄妹なのでは…? (2018年7月27日 21時) (レス) id: a2e26e90a4 (このIDを非表示/違反報告)
おつきみ(プロフ) - みっちゃんさん» コメントありがとうございます!!続きも楽しみにしてくださるとは、とてもありがたいです!!頑張らせていただきますねp(^_^)q (2018年2月15日 7時) (レス) id: 927d00d57e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おつきみ | 作成日時:2017年12月5日 23時