26.挨拶 ページ27
「はぁ?」
いつものメニューをやり終えると時刻は8時を回っていて視線の先には眠りこけている轟の姿があった。
確かにあの後、話もすることなく淡々と鍛錬していたが、まさか寝るとは。
この女、アホなんか。
まぁ、俺の知ったこっちゃねぇけどな。
そう思って、広場を後にしようとしたが、帰る気にもならず「ぁああ!クソ!!」と声を出す。
「んで、寝んだ。このクソ女」
寝顔を覗き込めば、長い睫毛に白い肌についた目の傷、整った顔が妙に際立って見えて舌打ちをした。
そういえば、誰かが可愛い奴がいると話していた気がする。そんなことを思い出して、頭を振った。
コイツなわけがない。
大体、男の前で寝る奴だぞ?無防備にも程がある。
幸せそうに眠る轟に腹が立って起こそうと手を上げた時だった。
『…しょ、ぅと』
轟が誰かの名前を呼んだ。
それに心がざわついて、顔をしかめる。
コイツが誰の名前を呼ぼうが勝手だろうが。
大体、兄かなんかかもしんねぇだろ。
上げていた手をそのまま轟の頰に下ろして、ペシッと叩く。
薄っすらと目を開けて起きた轟は、1、2度、周りを見渡すと『あ』と色気のない声を出した。
「帰んぞ。それとも、ここで埋まっとくか?」
『…ごめん、寝てた。帰る』
そう言いながらも、ふらふらと歩いていく轟にため息をついてその腕を引く。
「危ねぇな。しょうがねぇから送ってやる」
『優しい…』
「ぁあ゛?文句あんのかクソ女。しばくぞ」
『明日は槍が降る』
「テメェ、マジで腹立つ。車に轢かれろ」
会って、数週間。
なんとなく苦手なタイプだと思っていたが、違った。コイツ、マジで嫌いなタイプだ。
しばらく、罵り合いながらも歩いて不意に、轟の足が止まった。
「おい、どうし…」
『焦凍……』
「は?」
轟の目線の先を追ってみれば、そこには俺らの方へ走ってくる紅白頭の男。
あれが、轟の夢にも出てくる男、焦凍なのだろう。
そう思うと、少しだけ拳を強く握ってしまう。
『…ありがとう、爆豪。ここまででいい』
「……待てや。ここまで連いて来たんだ。最後まで居させろ」
『でも』
「うるせぇ、黙らすぞ」
そう脅せば、静かになる轟。
その瞬間、足元が凍った。
「なんだ、これ…」
『焦凍!?』
「…誰かは知らねぇが、Aから離れろ。」
氷のように冷たい目を俺に向けながら紅白男はそう言った。
「爆豪勝己。テメェこそ誰だ」
「轟焦凍」
バキッと氷が砕けた。
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おつきみ(プロフ) - ミリイ(灰崎信者)さん» えっと、それはステインさんが主役の小説ということでしょうか?それなら、ちょっと時間がかかるかもしれませんが、挑戦できたらしたいと思います! (2018年8月18日 12時) (レス) id: 927d00d57e (このIDを非表示/違反報告)
ミリイ(灰崎信者)(プロフ) - ステイン様の小説も書いて欲しいです (2018年8月18日 12時) (レス) id: 99fc6b4eef (このIDを非表示/違反報告)
おつきみ(プロフ) - 夢雪さん» 確かにそうですね。報告ありがとうございます!直しますね (2018年7月28日 14時) (レス) id: 927d00d57e (このIDを非表示/違反報告)
夢雪 - 兄弟というより兄妹なのでは…? (2018年7月27日 21時) (レス) id: a2e26e90a4 (このIDを非表示/違反報告)
おつきみ(プロフ) - みっちゃんさん» コメントありがとうございます!!続きも楽しみにしてくださるとは、とてもありがたいです!!頑張らせていただきますねp(^_^)q (2018年2月15日 7時) (レス) id: 927d00d57e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おつきみ | 作成日時:2017年12月5日 23時