検索窓
今日:3 hit、昨日:23 hit、合計:150,613 hit

20.隠し事 ページ21

『そういえば!焦凍、テスト100点だったよね!流石だなぁ』


話を逸らそうという意味でそう振ると、焦凍の顔は余計に歪んで、まさにど怒りだ。
生きた心地がしないというのはまさにこのことだろう。


「A?」


『はい、すみません』


そう謝りながらも、心の中では作戦会議。

どう言えば、焦凍は納得してくれるのだろうか。まさか、本音を言うなんて選択肢はあり得ないだろう。


「…言えない理由か?」


少しだけ、悲しみを含んだ声が耳に届いた。
ハッとして顔を上げると、焦凍は微笑んで私の顔をその両手で包み込む。


「引っかかった」


『……なにすんの』


焦凍の体温が頰に伝わり、少しだけこそばゆい感じだ。
本当に、コイツは狙ってやってるのかと疑いたくなるほどの行動力を時折みせるな。
そう、心の中で悪態を吐く。

だから、嫌なのだ。
中学生になって、隠し通せるか不安だから。


「ほら、はやくしろ」


『…聞いてたでしょ、私は折寺中学から雄英を目指したいんだよ』


「それだけか?」


『…っ、うん』


一瞬、言葉が詰まった。
それだけか?と聞く焦凍の瞳があまりにもまっすぐで純粋で、嘘をついていいものかと躊躇ってしまった。

これは、いい嘘なのだろうか。

私には、よく分からない。


「そうか。……残念だ」


残念。

そのたった二文字が、ズドンっと私の肩にのしかかってくるように重く感じた。
何に対しての残念なのか、本当は見抜かれているのではないか。そんな不安がその上さらに重くのし掛かる。


「Aと同じ中学校、いけると思ってたのに」


『ごめん、ね』


「いや、わがまま言ったな。お前の好きなところに行けばいい」


そう言って、笑う焦凍。
そんな焦凍にかける言葉もなく只々、下を向いた。

私がこんな気持ちを持っていなかったら、どれだけ良かったか。
いっそ、打ち明けることができたら……


『…っ、大丈夫だよ。学校違っても、さ』


嘘つき。

そう心の中にいるもう一人の私が呟いた。


その私を閉じ込めて、必死に笑顔を作る。
これさえ、乗り切ればあとは普通の生活が待っているはずだから。
いつか、焦凍にも好きな人ができて、その時に私が重りにならないように。


私は、焦凍から逃げるんだ。
そして、この気持ちからも。



あぁ、どうして。


兄弟同士の恋は禁忌なんだろうか。

21.卒業式→←19.不注意の



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (70 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
121人がお気に入り
設定タグ:ヒロアカ , 轟焦凍 , 双子   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

おつきみ(プロフ) - ミリイ(灰崎信者)さん» えっと、それはステインさんが主役の小説ということでしょうか?それなら、ちょっと時間がかかるかもしれませんが、挑戦できたらしたいと思います! (2018年8月18日 12時) (レス) id: 927d00d57e (このIDを非表示/違反報告)
ミリイ(灰崎信者)(プロフ) - ステイン様の小説も書いて欲しいです (2018年8月18日 12時) (レス) id: 99fc6b4eef (このIDを非表示/違反報告)
おつきみ(プロフ) - 夢雪さん» 確かにそうですね。報告ありがとうございます!直しますね (2018年7月28日 14時) (レス) id: 927d00d57e (このIDを非表示/違反報告)
夢雪 - 兄弟というより兄妹なのでは…? (2018年7月27日 21時) (レス) id: a2e26e90a4 (このIDを非表示/違反報告)
おつきみ(プロフ) - みっちゃんさん» コメントありがとうございます!!続きも楽しみにしてくださるとは、とてもありがたいです!!頑張らせていただきますねp(^_^)q (2018年2月15日 7時) (レス) id: 927d00d57e (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:おつきみ | 作成日時:2017年12月5日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。