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2.手 ページ3

『おかあさん!』


台所にいた母を見つけ、焦凍と一緒に走って母に近寄った。
そうすると、腰を屈めて私達の頭を撫でると母はニコリと笑う。


「ご飯できてるから食べなさい?」


優しい口調で私達に言ってダイニングに連れて行かされるとそこにはあるべき姿がなくてホッとした。

父がいなかったのだ。

あぁ、だから静かだったのかと先程までの心配も杞憂だったと安心した。


『おとうさん、いないんだね』


そう言うと、お母さんは少し顔を歪ませて、焦凍は私の手をギュッと握ってこちらを見た。


「お父さんはね…仕事に行ったのよ」


珍しい。

そんなことを思った。
基本、朝はゆっくりと過ごしている父。こうやって、朝にいないのは私が知るには初めてのことかもしれない。


「…A、たべよう」


父の話をしたからだろうか。
少し、機嫌が悪い焦凍に頷いて座布団の上に座った。
食卓に並べられたご飯に目を輝かせながらも箸を持って食べようと……


『ねぇ、しょーと。たべれない』


「………」


ギュッと手を握られたままでお茶碗を持つことができない。


『しょーと』


「………」


焦凍の機嫌はかなり悪かったらしい。
聞く耳持たずって感じだ。


『たべないの?』


「…たべる」


パッと手を離した焦凍。
解放された左手でお茶碗を持ってご飯を食べ始める。

うん、やっぱりお母さんのご飯は美味しい。


『おいしぃー!!』


「そう?良かったわ」


ニコリと母は微笑んで、私の頭を優しく撫でる。


『わたし、おかあさんのてすき』


そう言うと哀しそうな表情をして、母は「ありがとう」と笑った。

食事を開始しようと手をもう一度動かそうとした時、頰に冷たい何かが触れる。
焦凍の手だ。


『なに?』


「ぼくも」


やはり、不機嫌な顔で私の方を見る焦凍。
それに成る程ねと納得したような顔で母は笑っていた。

焦凍が何を欲しがっているのか分からない私は母の方を見た。
母は私に耳打ちすると、その内容に私も笑顔になる。


『しょーとのてもすきだよ』


「ん」


そう言うと、機嫌が良くなった焦凍。


「やっぱり、仲良いわね」


母がそう言うと、焦凍は私をギュッと抱きしめて「うん!」と笑った。
そんな中。


『ごはん〜』


なかなか食べられないご飯。
焦凍に背後から抱きしめられながらも食べようともがく。
焦凍はもう食べ終わったらしくお茶碗には何も入ってない。


『しょーと、こら!!』


なにげない日常。
それが大好きだった。

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設定タグ:ヒロアカ , 轟焦凍 , 双子   
作品ジャンル:恋愛
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おつきみ(プロフ) - ミリイ(灰崎信者)さん» えっと、それはステインさんが主役の小説ということでしょうか?それなら、ちょっと時間がかかるかもしれませんが、挑戦できたらしたいと思います! (2018年8月18日 12時) (レス) id: 927d00d57e (このIDを非表示/違反報告)
ミリイ(灰崎信者)(プロフ) - ステイン様の小説も書いて欲しいです (2018年8月18日 12時) (レス) id: 99fc6b4eef (このIDを非表示/違反報告)
おつきみ(プロフ) - 夢雪さん» 確かにそうですね。報告ありがとうございます!直しますね (2018年7月28日 14時) (レス) id: 927d00d57e (このIDを非表示/違反報告)
夢雪 - 兄弟というより兄妹なのでは…? (2018年7月27日 21時) (レス) id: a2e26e90a4 (このIDを非表示/違反報告)
おつきみ(プロフ) - みっちゃんさん» コメントありがとうございます!!続きも楽しみにしてくださるとは、とてもありがたいです!!頑張らせていただきますねp(^_^)q (2018年2月15日 7時) (レス) id: 927d00d57e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:おつきみ | 作成日時:2017年12月5日 23時

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