1.双子 ページ2
ピピピッと機械音がして目が覚める。
布団から手を伸ばし、その音の元凶である目覚まし時計をバンッと叩く。
音が鳴らなくなったことを確認して、もう一度眠りにつこうとした時、ギュッと右手に違和感を覚えた。
『な、に?』
横を向くと、兄が気持ちよさそうに寝ているのが分かる。
轟焦凍。
彼はよく私の布団に潜り込んでくる。それを母親に言うと、妹ができて嬉しいのよと笑っていた。
『しょーと、おき』
そんな彼を揺さぶり、起きるように促す。
彼の白色の髪がサラサラと顔にかかって、パチリと目を開けた焦凍はまだとでも言うように私の腕を引っ張った。
『むぅ、しょーと』
すっぽりと焦凍の腕の中に収められて身動きの取れなくなった私は怒ったように声をかける。
それでも、彼は放そうとはしない。
背中から焦凍の体温が伝わってきて、少しくすぐったかった。
「あと、すこし」
『しょーとは、おきないと』
「Aも」
『ちがうもん』
私は起きなくてもいい。
焦凍はお父さんの期待なのだから早く起きなければならないのだ。
私は、そう知っていた。
『はやく、しないと』
時計をチラッと短い針が七を指して、長い針が二のところを指しているの確認して焦る。
お父さんには遅くとも長い針が十二を指すときまでに起きろと言われていた。
『おとうさんがいってたじかんになっちゃうよ』
「んー、」
チュッと音がして、頰に違和感を感じる。
いつもの目覚めのキスらしかった。
こうして、兄が私の布団で寝ていた朝は頰にキスすることが習慣だ。
別に嫌だと言うわけではなく、むしろ嬉しいし好きだ。
『わたしもおきる、から』
「うん」
部屋にある服に着替えてから、焦凍に差し出された手を握って二人で台所まで歩く。
きっと、お母さんがいるはずだ。
台所までは長くて、冷たい廊下を歩かなければ行けないから、すこし苦手。
それでも、こうやって兄と手を繋いでならこの長い廊下もすぐに終わる。
だから、手を握って歩くことも好きだ。
『しょーと、おとうさんにおこられる?』
ふと、少しだけ、握る力を強くして静かな廊下に嫌な予感がすると肩を震わせた。
「だいじょうぶ!Aはぼくがまもるから!」
そう言って、前を歩いてくれる兄の背中は小さいながらにも頼もしくて、大好きだったのを覚えている。
121人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おつきみ(プロフ) - ミリイ(灰崎信者)さん» えっと、それはステインさんが主役の小説ということでしょうか?それなら、ちょっと時間がかかるかもしれませんが、挑戦できたらしたいと思います! (2018年8月18日 12時) (レス) id: 927d00d57e (このIDを非表示/違反報告)
ミリイ(灰崎信者)(プロフ) - ステイン様の小説も書いて欲しいです (2018年8月18日 12時) (レス) id: 99fc6b4eef (このIDを非表示/違反報告)
おつきみ(プロフ) - 夢雪さん» 確かにそうですね。報告ありがとうございます!直しますね (2018年7月28日 14時) (レス) id: 927d00d57e (このIDを非表示/違反報告)
夢雪 - 兄弟というより兄妹なのでは…? (2018年7月27日 21時) (レス) id: a2e26e90a4 (このIDを非表示/違反報告)
おつきみ(プロフ) - みっちゃんさん» コメントありがとうございます!!続きも楽しみにしてくださるとは、とてもありがたいです!!頑張らせていただきますねp(^_^)q (2018年2月15日 7時) (レス) id: 927d00d57e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:おつきみ | 作成日時:2017年12月5日 23時