承継の儀 ページ38
次の日、俺は朝から大層な着物を着せられていた。
重いっつーの。
「あと少しです。もう少々辛抱なさいませ」
「早く終わらせろ」
今でも考えている誰がジジイを殺したのか。
いつから殺されていたのか。
……少なくとも、俺をここへ呼び戻したのはジジイたちからの圧力ではない。
なら誰が?
「終わりました」
「参りましょう、お手を」
「ああ」
家の者は俺の豹変ぶりに驚いているようだった。
ケッ、誰が楽しくてこんな家でイイコチャンやってるってんだよ。
一通りの作法を頭に入れて、本家、分家と集まる広間へ向かう。
本来なら前当主から家紋の入った羽織と章飾を受け取り、継承されたことになるが、前当主は死んだので前前当主… クソジジイから受け取ることになっている。
今時章飾って…
とりあえず、広間の前に着いたので叩き込んだ作法通りに頭を垂れる。
すると襖の開かれる音。
「顔をあげなさい。中へ」
「失礼いたします」
頭を上げ、しっかり前を見据えると知ってる顔から知らない顔までズラリと両サイドに並んでいる。
うわ、お前ら誰やねん。
人多いな…
そんなことを考えながらクソジジイの前まで歩いて行き、再び目の前で頭を垂れる。
「一族諸君、急な呼びたてとはいえこれだけの集まり感謝する。我が息子が何者かに殺され、今この家はとても揺らいでいる。
揺らいではいけない。我が一族は常に強者であることを求められ、望んできた」
あー… 始まったよ。老人の長話が。
周りのおっさんたちも良くこんな話顔色一つ変えないで聞いてられんな?
しばらく高専帰れねぇな…
交流会あんのになァ…
しょうがねぇか。諸々の引き継ぎやらなんやら全部終わったわけじゃねぇし。
「よって、一色Aを六十七代当主に命ずる」
ワァァァァアアアと沸き起こる拍手。
っやべぇ聞いてなかった。
まぁいいか、どうせ大した話じゃない。
この後俺の挨拶だっけ、と思い出して立ち上がり両サイドに構えるおっさんたちに向けて一礼する。
「お初にお目にかかる方もいらっしゃるかもしれません。改めまして、
父上の突然の死、今でも受け入れられておりませぬ。私自身未だ不安定であります故、ここにいる皆様にご助力いただけること至極感謝致します。
至らぬところもございますが、何卒よろしくお願い申し上げます」
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夜桜(プロフ) - 面白いです。頑張ってください グリムジョーが、カッコイイです。 (2021年2月20日 17時) (レス) id: 61068c4ac1 (このIDを非表示/違反報告)
むーちゃん(プロフ) - 続編おめでとうございます!凄くいい展開で楽しみです!更新頑張ってください!! (2021年1月16日 10時) (レス) id: 61a580f902 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:宮 | 作成日時:2021年1月15日 16時