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得体の知れない思いを抱きながらも、
淡々と過ぎる日々の中で、業務をこなし
『(今日、亡くなった隊士は二人…。)』
その亡骸を静かに眺めた後は自室へと戻り、勉学へと励む。
次の日も、そのまた次の日もいつもの業務に取り掛かり
『(…今日は…五人…、…___)』
業務を終えた後は、しのぶさんに譲り受けた薬草を用いて薬の調合を行い
『(後でしのぶさんに見てもらおう…。)』
試作品が完成した後は、部屋の灯りを消して床へと就いた。
それから数週間、数ヶ月…いつも通りの日常を繰り返し
『なァ…目開けてくれよ…!何で…なんで、お前が死ななきゃいけねぇんだよ…ッ___』
返事が返ってこない事は分かっていながらも、
冷たくなったその手を握り、必死に呼び掛ける隊士の後ろ姿を…静かに見守る。
あの部屋での業務を終えた後は、自室に戻り
いつものように分厚い書籍を開こうとしたものの、
『………、』
今日は何だか気乗りせず、床へと就き静かに瞼を閉じた。
後日、療養する隊士たちの部屋を回る中で
とある一室の扉へと手をかけようとすると、
『それにしても、不死川さん凄かったよな〜…多勢の鬼をほぼ一人でぶった斬るんだからよ…』
『あの強さは尋常じゃないよな…さすが次期柱候補。』
何気ない隊士たちの会話が扉越しに耳へと入り込み
扉を開ける直前で、思わずその手を止めてしまう。
『あの人が増援に来てくれなきゃ…今頃、俺らはどうなってた事か…。』
『不死川さんのおかげで、あの場にいた全員が助かったからな…今度会ったらお礼言わねぇと。____』
そんな隊士たちの会話を耳にしながらも、
『………』
握り締めていた拳をすぐさま解き、部屋へと足を踏み入れた。
その日の業務を一通り終え、自室へと戻った後は
先日、作ったばかりの薬品が注がれた瓶を手に取り
しのぶさんの助言をもとに、改良を重ねていこうとするものの
瓶にはいつの間にかヒビが入っており、
机上に広がるその液体は、次第に床へと零れ落ちていく。
じわじわと畳へと染み込む液体を眺めながら、
『(まァ…別にいいか…、)』
そんな事を思った後、液体を拭き取り…割れた瓶を捨て
部屋の灯りを消し、寝床へとつくものの
その日は一睡もする事が出来ず、
『(………、)』
気づいた頃には、眩い光が部屋へと差し込んでいた。
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作者名:雫 | 作成日時:2023年9月18日 10時