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不死川がそう尋ねるものの、



「……」



黒羽は一言も発する事なく、手元の櫛をただ見つめており



「(気に入らなかった…かァ…?)」



少し不安げに、不死川が視線を向ける中



黙り込んでいた黒羽が、ようやく口を開いたかと思えば



「アンタ…何でこの色にしたんですか。」



「私が手に取って見ていたのは、紅色の櫛でしたよ。」



不死川の方へと視線を移し、そんな問いを投げ掛ける。



不死川は少し考え込むような様子をみせながらも、



「何でって…こういう色が好きだって、お前が自分で言ってたろォ」



「それに…確かにお前、他の櫛手に取って見てたけどよォ……去り際目にしたのは、こっちの櫛だったろォ」



すぐさま口を開き、黒羽の問いに対してそう返答する。



黒羽は不死川の言葉を受け「…そうですか、」と呟いた後



「……、…____」



手元の櫛へと視線を戻し、ふたたび口を閉ざす。















黒羽の脳裏には、遠い昔に掛けられた…言葉の数々が頭の中へと浮かび






『紫なら…いつかきっと、素敵な男の子から櫛を貰えるわ。』



『…男の人が女の人に櫛を送るのは、深い愛情の表れよ。生涯、共にしたいと思う人に贈るものなの。』



『紫は今、櫛を貰いたい相手…いたりするのかしら?』










『じゃあ…紫の為にも買わない方がいいのか…。』



『貰うなら…俺じゃなくて、本当に好きな相手から貰いたいよな。』









『紫、いつか…粂野くんから貰えるといいわね。』


















「____…、……」



手元の櫛を眺めながら、黒羽が過去の記憶を思い起こす中



「(コイツ…何で何も言わねェ…、)」



「(気に入らねェってなら…いつもみてェに言ってくれる方がまだいいンだけどなァ…。)」



不死川が不安そうな様子で、そんな事を思っていると















「……ふっ、___」
















黒羽は突如、閉ざしていた口を開いたかと思えば



込み上げてきた笑いを抑える事なく、大口を開け笑い始め



「___不死川さん…アンタ、やってくれましたね…。」



黒羽はそう告げると同時に、不死川に対してそんな言葉を投げ掛ける。



「…は、」



一方、不死川は訳が分からず…目の前で笑い続ける黒羽を見つめていると



「あー…」



黒羽は何とか笑いを抑え、僅かに濡れた目元を拭いながら



「まさか…アンタに嫌がらせされるとは思ってなかったので……不意突かれましたねこれは…、___」

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作者名: | 作成日時:2023年9月18日 10時

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