黒蝶の夢・弍【不死川実弥】 (ページ41)

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「期限付き…と言いますと、？」

黒羽の言葉を受け、家主がそう尋ねると

「……」

黒羽は一瞬口を閉ざしながらも、すぐさまその問いに返答するようにして

「私の気が変わるまで…って所ですかね、」

「何分、私は気分屋なもので…長期の頼みだとか、約束事だとかは苦手なんですよ。」

「だから気が変わらないうちは…あなたのその頼み、引き受けますよ。どうします？」

黒羽がそう尋ねると、家主は黒羽の両手を包み込むようにして握り

「…是非…、お願い致します…！」

和やかな笑顔を浮かべながら、掴んだ両手をぶんぶんと振り回す。

そんな二人のやり取りを、側で目にしていた不死川は

「なァ…頼みってなンだァ」

家主に対して、そう尋ねるものの

「不死川さん、早く行きますよ。」

黒羽は家主が口を開く前に、不死川を強引に屋敷の外へと押し出す。

そして屋敷を去る前に、黒羽はふたたび家主の方へと振り返り

「この件は…くれぐれもご内密に。___」

微笑を浮かべながら、そう告げた後

「不死川さん、アンタ…今日の任務どの辺ですか。」

「歩くの面倒なので、途中まで引き摺ってくれませんかね。」

「何でそうなンだァ…自分で歩けェ」

屋敷へと背を向け、不死川と共に歩き出す。

家主は門の前まで出向き、任務に向かう二人の後ろ姿を見送りながら

「(十分…お似合いかと思いますがね…。)」

ふと、そんな事を思うと同時に

「……、…___」

かつて、隊士であった頃の不死川の姿と

その隣で朗らかに笑っていた、青年の姿を思い起こす。

「(粂野様に先立たれ…一時は心配しておりましたが…、)」

「(不死川様は…まだ、笑う事が出来るようですね…。___)」

家主の視線の先には、黒羽の態度に苛立つ様子を見せながらも

微かに口元が緩む、不死川の姿があり

「(彼女が…頼みを引き受けてくれた事ですし、しばらくの間は大丈夫だと、そう思いたいところですが……)」

家主はそんな期待を抱く一方で、

先程、一瞬ではありながらも…口を閉ざした黒羽の姿が脳裏に浮かび

「(彼女は…きっと、既に覚悟が決まっていらっしゃるんでしょうね…。)」

「(まだお若いというのに…立派なお方です…___)」

瞼を伏せるようにして、視線を落とした後

二人の姿が見えなくなったところで、屋敷の方へ戻り

次に訪れる隊士を迎える為、準備を進めていった。