黒蝶の夢・弍【不死川実弥】 (ページ33)

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黒羽はそう告げた後、その場に立ち上がり

冷たい雨が降り続ける、薄暗い雲を眺めながら

「傘…持ってくれば良かったんですけど、アンタに差し出すのが嫌なんで…敢えて置いてきました。」

不死川に対して、そんな言葉を投げ掛ける。

「……」

今まで黙って話を聞いていた不死川は、ようやく重たい口を開き

「俺に傘差し出す優しさなんて…端から持ち合わせて無ェだろォ…、」

黒羽の言葉に対して、呟くようにしてそう返すと

黒羽はふっと笑みを溢しながら、

「さすが不死川さん…よくお分かりで、___」

そう返した後、ふたたび不死川の方へと視線を向けて

「まァでも…こうして一緒に雨に降られるのも、悪くないと思いませんか。」

「自分一人じゃない…って思えるからいいでしょう。これでも私は…不器用なりに、アンタに気を回してるつもりなんですけどね。___」

そう告げた後、黒羽は一瞬視線を落とし

「あの日も…一緒に、濡れてあげるべきでしたね…。」

そう…呟くものの、その声は不死川の耳に届く事なく

地を打つ重苦しい雨音だけが、辺りに響き渡る。

「……、…___」

不死川は少しの沈黙の後、その場に立ち上がったかと思えば

身に付けていた羽織を黒羽の頭上へと被せ、

「余計な気…回すンじゃねェ…、風邪引くだろォ…。」

呟くようにしてそう告げた後、不死川はすぐさま黒羽の腕を取り

「…早く行くぞォ、___」

雨が降り続ける中、急いで何処かへと向かう。

＊＊＊

___辿り着いた先は、藤の花の家紋を掲げる屋敷。

「不死川様…！ご無沙汰しております、」

柱である不死川に、家主が深々と頭を下げる中

「悪ィが…風呂と代えの服、貸してもらえねェかァ」

不死川は雨で濡れた髪をかき上げながら、そんな言葉を投げ掛ける。

「勿論ですとも…！ささ、早くお上がりになって下さい。____」

人柄の良さそうな家主が、二人を中へと案内する途中

「…不死川さん、有り難迷惑って言葉…知ってます？」

羽織を被っていた黒羽が、口を開いたかと思うと

「アンタの羽織…吸収性高すぎて…、余計…冷え___」

顔面蒼白な表情を向けながら、不死川に対してそう言ってきた為

「悪ィ…！早く風呂行けェ、___」

不死川はすぐさま羽織を手に取り、浴場へと向かう黒羽を見送った後

自身も湯浴みをする為、男湯の方へと足を運んだ。