黒蝶の夢・弍【不死川実弥】 (ページ21)

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黒羽はその後も続けて口を開き、

「当初、あなたは剣士になるといった私を引き留めましたけど……入隊後、すんなり受け入れてくれたのは…私に自分自身を重ね、同情したからでしょう。」

「努力だけでは…どうしても埋められない差が、そこにはありますからね。この体格で鬼狩りだなんて…圧倒的に不利でしかない、」

「頸を落とすよりも…鬼に殺られ、自らの命が尽きる可能性の方が高い……そんな事を悟りながらも、そう簡単に諦める事なんて出来ませんからね。」

そう告げた後、黒羽は真っ直ぐなその瞳の中に、胡蝶の姿を確と捉え

「私は…そんな自分の気持ちを汲んでくれた、あなたには感謝していますよ。」

「…しのぶさんが私の師で、本当に良かった。___」

そう言って微笑を浮かべた後、黒羽はふたたび背を向けて

「まァ…とりあえず、そういう事なので把握お願いしますね。私はもうあなたに頼らず自立しますよ、」

部屋を後にし、自室の方へと歩き出そうとすると

「__紫、」

胡蝶はいつになくはっきりとした口調で、黒羽の名を呼んだかと思えば

黒羽が振り返ると同時に、何処か影のある笑みを浮かべ

「お互い…頑張りましょうね。___」

胡蝶はそう告げた後、黒羽に背を向けて、颯爽とその場を立ち去っていった。

「……、」

黒羽は去っていく胡蝶の後ろ姿を、最後まで見送った後

先程、静かに手を合わせた仏壇へと目を向けて

「(カナエさんは…前に言ってましたよね、『しのぶと紫は、もっと笑ったほうがいい』…って。)」

「(『皆が笑顔でいる事が私の幸せ』だと…そう言ってましたけど…、)」

「(今のこの状態を目にした時、あなたが幸せだと思えるか……私は甚だ疑問ですよ。____)」

ふとそんな事を思った後、静かに背を向けて自室の方へと歩き出す。

廊下を歩く途中、黒羽は先程の不死川とのやり取りを思い出し

「(少し…意地悪しすぎましたかね…、)」

「(まァでも…最初に無神経な事言ってきたのは向こうですし、自業自得でしょう……ざまァみろ。)」

そんな事を思いながら、自室の襖を閉め

机上に立て掛けてある、とある写真へと視線を落とす。

そこには朗らかに笑う…かつての想い人の姿があり、

「………」

黒羽はその写真を静かに見つめた後、採取した藤の花を手に取り

「(さて…どう作りましょうかね、___)」

部屋へと篭り、自らが口にする毒を作り始めた。