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(No side)
「(___塩っぱい…、)」
「あ、紫!それ不死川さんの分なのに…勝手に食べちゃダメでしょ!!」
某日、蝶屋敷の台所では甲高いアオイの声が響き渡り
つまみ食いする黒羽に対して、叱るような口調でそう告げる。
「アイツ、病み上がりだし…おにぎり一つでいいよ。このまま持ってく。____」
対する黒羽は何食わぬ顔でそう言いながら、一旦手に持ったおにぎりを皿へと戻し
「ちょっと紫!待ちなさ___」
アオイの言葉を待たずして、不死川が療養する部屋へと向かう。
「不死川さん、入ります。」
部屋へと足を踏み入れた後は、不死川の目の前にお盆を置き
先程、皿へと戻したおにぎりをふたたび手に取って
「食事の時間です、しっかり食べて怪我治して…早く此処出て行って下さい。邪魔なんで、」
もぐもぐと口を動かしながら、不死川にそんな言葉を投げ掛ける。
対する不死川は、怪訝な表情を黒羽に向けて
「お前、何で勝手に人のモン食ってんだァ…それ俺のだろォ…」
そう告げるものの、黒羽は悪びれる様子もなく
「アンタ、心狭いですね。別におにぎりの一つや二つ、いいじゃないですか…って事で、もう一つ貰___」
そう言って、皿へと手を伸ばしかけた時だった。
不死川は黒羽の手首を掴み、その動きを止めると同時に
「お前…味覚は、」
咄嗟にそんな問いを黒羽へと投げ掛ける。
対する黒羽は、不死川の方へと視線を向けて
「…アンタ、師範からあの薬のこと聞いたんでしょう。まァ…完全に戻った訳じゃないですけど、かろうじて分かるくらいにはなりましたよ。」
「とは言っても…どうせまたすぐ狂うと思うんで、食べれる時に食べときます。___」
そう告げると同時に不死川の隙をついて、おにぎりを奪い取り
「これ、新米なので美味しいですよ。アンタの分はもうないですけど、」
もぐもぐと頬張りながら、そんな言葉を投げ掛ける。
「(このクソガキ…)」
対する不死川は若干の苛立ちを感じながらも、
「(前より…顔色良くなってンなァ___)」
安堵の笑みを浮かべながら、側でおにぎりを食べる黒羽の姿を眺めており
「………」
その視線の意味に勘付いた黒羽は、少し呆れた様子で
「(本当…そういうところですよ、___)」
内心ため息を吐きながらも、不死川に見守られる中、おにぎりを口へと運んでいた。
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作者名:雫 | 作成日時:2023年9月18日 10時