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それから、私はアイツに対して
「それと…お前、『嫁入り前』だ何だ言ってるが…私は嫁に行くつもりも無ければ、宛もない。」
「第一、そんな望み…とうの昔に捨てたしな。」
鬼殺隊に入った以上、ごく一般的な…人としての幸せは望めないという事は、随分前から分かっていた。
けど…父さんは生前、私に対して
『今からでも…刀を手放し、普通の女子としての幸せを歩んでも構わない。』
『誰も一華を…責めたりはしないだろう。だから、___』
…そう言ってはくれたが、私は刀を握り続ける事を選んだ。
そこには、鬼によって殺された…母さんの死が関わっている事は勿論、
長年剣士として、柱として…鬼殺隊を支えてきた父さんの背中を見てきた事もあって、
私は…自ら、剣士になる事を選んだ。
だから、その選択に後悔など無くて
剣士として生涯終える事になっても、構わないと思っている。
それに、私は…顔こそ目立った傷は無いが、
衣服の下の傷は絶えず、子供を産めるかどうかも危うい身だ。
…そんな私に嫁の貰い手など、つく訳がない。
「(おまけに…『無愛想』で『性格悪い』と、初対面の奴等に言われる始末だからな。…どう転んでも、嫁に行ける訳が___)」
そんな事を思っていると、アイツが呟くようにして
「……俺ァ、お前の花嫁姿…見てェけどなァ……。」
そんなアイツの言葉に驚き、思わず視線を向けると
本人は無意識だったのか、驚いたような表情を浮かべた後、すぐさま私から視線を外す。
私はそんなアイツに対して、軽い冗談のつもりで
「そうか、そんなに見たいなら…お前が嫁に貰え。生憎、私に貰い手など付きそうにないからな。」
そう言うと、先程視線を外したアイツは、ふたたび私の方へと視線を向けたかと思えば
「……いいのかァ、」
いつになく真っ直ぐなその瞳で捉えられ、
「…え…、…」
動揺を隠せずにいると、アイツはそれを察したのか
私から視線を外し、前を向いて歩きながら
「…軽々しく…そういう事、言うんじゃねェ。」
いつものような口調で注意を促し、少しの間、気まずい沈黙が流れてしまった。
「(何だ…今の…、コイツ…一体どういうつもりで…、___)」
先程までは何も考えず、アイツの腕を取って歩いていたが
「(何だか…、落ち着かないな…。)」
気づかれない程度に、アイツから少し身を離し
早まる鼓動を押さえ、平常心を保ち続けた。
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よっしー(プロフ) - はじめまして!実弥が好きでこの小説に出会い、春雷と星屑を一気読みしちゃいました!面白かったです!どちらの作品もすごく良かったので、また他の作品も楽しみに読ませていただきます!久々にキュンキュンしましたー✨ (9月29日 6時) (レス) @page50 id: 9a6c96b2f0 (このIDを非表示/違反報告)
Kk - この小説すべて読みました。とてもおもしろいです。よければ現代のほうも書いてください。まだまだ暑い日が続いてるので体調に気をつけて元気に過ごしてください (9月11日 15時) (レス) @page50 id: 51f0cf609d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雫 | 作成日時:2023年7月27日 0時