代償 ページ43
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無惨が死に絶え、
鬼のいない…平和な世界が、ようやく訪れたというのに
「(こんなに…気持ちが晴れないのは…、何でだろうな…。____)」
目の前には泣き崩れてしまう、蝶屋敷の娘たちと
『胡蝶』と名が記された真っ白な墓石。
胡蝶さんに似合う可憐な花を供え、手を合わせた後
静かに背を向け、次の場所へと向かう。
「(蜜璃は…花より、食べ物の方が良かったか…？次来た時は…桜餅を供えよう…。)」
そんな事を思いながら、友人の墓の前へと手を合わせ
「(お前は…次こそはちゃんと蜜璃に告れよ…、というか…今すぐ告れ。それで持って蜜璃を幸せにしろ…、)」
散々、私に嫉妬の目を向けてきた…伊黒には、そんな言葉を投げ掛ける。
その後は、本人によく似た…貫禄のある墓を目の前にし
「(最強と称された…悲鳴嶼さんでさえ…、亡くなってしまうんだもんな…。)」
人間という生き物の儚さを、改めて実感すると共に
「(皆を…護れなかった…、)」
どうしようもない己の無力感に囚われてしまう。
そんな事を思いながらも、決して歩みは止める事なく
次に訪れたのは『時透』と名が記された墓。
「(正直、時透とは…あまり話をした事がなかったが…、…____)」
柱稽古の最中、屋敷を訪れた際に
『君、目…綺麗だね。もっとよく見せてよ、』
手合わせ中、そんな言葉を掛けられたかと思えば
持っていた木刀を放り投げ、ずかずかとこちらに迫り
『瞳の中に…星がある…これ、取れたりする？』
至って真面目な口調でそう言われ…眼球を持っていかれそうになった。
あの時はその手を止め、逃れはしたが
「(こんな事になるなら…一つ、お前にくれてやってもよかったな…。___)」
そんな思いを抱きながら、私が手を伸ばした先には
あの戦いで失ってしまった…私の右目。
時透が『綺麗だ』と言ってくれた、片方の瞳は…もう開く事はなく、今では眼帯が当てられている。
「(鬼に持ってかれるよりだったら…時透の方がマシだった…、)」
そんな事を思いながら、時透の墓の前で手を合わせ
花を供えた後、静かにその場を後にする。
この戦いで得たものは、非常に大きく、意味のあるものだった。
けれど、その代償もまた…非常に大きいもので、
前を向くのには時間が掛かりそうだと、そう…思った。
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よっしー(プロフ) - はじめまして！実弥が好きでこの小説に出会い、春雷と星屑を一気読みしちゃいました！面白かったです！どちらの作品もすごく良かったので、また他の作品も楽しみに読ませていただきます！久々にキュンキュンしましたー✨ (9月29日 6時) (
レス) @page50 id: 9a6c96b2f0 (このIDを非表示/違反報告)
Kk - この小説すべて読みました。とてもおもしろいです。よければ現代のほうも書いてください。まだまだ暑い日が続いてるので体調に気をつけて元気に過ごしてください (9月11日 15時) (レス) @page50 id: 51f0cf609d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雫 | 作成日時：2023年7月27日 0時
