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不死川はその後、おはぎを食べ進める手を止め
視線を下へと落としながら、口を閉ざす。
そんな不死川の様子を受け、西條は茶屋の女性に声を掛けたかと思うと
「コイツと同じの…もう一つ頼む。」
おはぎを注文し、咥えていた煙草を一旦、口元から離す。
不死川は西條に対して、不思議そうな表情を向けながら
「甘いモン…苦手なんじゃねェの、」
そう問いかけると、西條は特に返答はせず、届いたおはぎを手に取り
「……甘いな、」
そう呟きながらも、食べ進めていく。
おはぎ一つを食べ終えたところで、西條は静かに口を開き
「私は…実弥の兄弟子の代わりになろうとは思わないし、当然…代わりになんてなれる筈もない。」
「でも…仲間として、君の悲しみを分かち合う事は出来る。だから、吐き出したい事があるなら…全部話せばいい。」
「こうして一緒におはぎでも食べながら…、話くらいはいつでも聞いてあげられるからさ。」
西條はそう言った後、手元に残る二つのおはぎを見つめ
「一つ…食べないか?思った以上に甘いな、これ…あと一つくらいしか食べれそうにない。」
そう言って不死川へと視線を向けると、不死川は軽くため息をつきながらも
「……仕方ねェなァ…、食ってやらァ。」
西條から一つおはぎを受け取り、口へと運んでいた。
西條はそんな不死川を目にしながら、
「それで…?君の兄弟子は、どんな人だったんだ。」
そう尋ねると、不死川はおはぎを飲み込んだ後、亡き兄弟子の事について語り始めた。
西條は不死川の話を聞く中で、
「いい奴だな、ソイツ。通りで君に好かれる訳か、」
時折、相槌を挟みながら、兄弟子との思い出について語る不死川の様子を眺めていた。
その後、不死川は一通り話したところで、西條へと目を向け
「俺ァ…お前の話も聞きてェ。…お前にもいたんだろ、大事な…同期がよォ。」
不死川がそう告げると、西條は少し何か考えたような素振りを見せた後
「その話は…また今度な。そろそろ行こうか、」
そう声を掛け、その場に立ち上がる。
そして、少し間を置いてから、口を開き
「それと…この前は、悪かった。君の大事な兄弟子に…あの言い方は、良くなかったよな……本当にすまない。」
不死川はそう告げる西條を見つめた後、
「……俺も…この前は悪かったなァ、急に…胸ぐら掴んだりしてよォ…」
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作者名:雫 | 作成日時:2023年7月19日 18時