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後日、別の任務にて、西條は不死川に同行する中
不死川は相変わらず一人先へと歩いていくものの、
「(随分と…大人しいな…、)」
前回任務を共にした時のような、張り詰めた空気は感じられず
西條は煙草を咥えながら、不死川の後ろ姿をただ見つめていた。
道中、特に会話もなく歩いていると、茶屋が目に入り
西條は視界に入った茶屋を指差しながら、
「日没まで、時間あるし…そこで時間潰そう。」
そう声を掛けると、不死川は立ち止まり、西條の方へと視線を向ける。
「…………。」
特に返事はしなかったものの、西條が茶屋へと向かうと、不死川はその後をただ黙ってついてきていた。
西條はそんな不死川を目にし、少し困ったような表情を浮かべて
「(この前の任務…言いすぎたか…?キツく叱ったつもりはなかったんだが…、)」
そんな事を思いながら、案内された縁台へと腰を下ろす。
西條は茶屋の女性から品書きを受け取った後、隣に座る不死川へと回して
「何でも好きなの頼むといい、奢るよ。」
咥えていた煙草を手に取り、ふーっと煙を吐き出しながらそう告げる。
不死川は品書きに目を向け、『おはぎ』を指差すと
西條は茶屋の女性に声を掛け、女性は注文を受けた後、店の奥へと向かう。
注文を待っている間、不死川は西條を横目で見ながら
「…お前は…何も頼まねェのかァ、」
そう尋ねると、西條は外の様子をぼんやりと眺めながら
「甘いものは…苦手なんだ。」
とだけ返答。会話がそこで終わると、二人の間には少しの沈黙が流れる。
その後、不死川のもとにおはぎが届くと、
不死川はすぐさまそれを手に取り、黙々と頬張っていく。
西條は微かに緩んだ不死川の口元を目にし、
「(おはぎ…好きなのか、意外だな…。)」
そんな事を思っていると、不死川が呟くようにして、静かに口を開き
「匡近に…よくこの店に、連れて来てもらってた……アイツが死んでから…此処に来たのは、今日が初めてだァ…」
「……また一緒に…、おはぎ…食えると思ってたンだけどなァ…___」
ポツリとそう呟く不死川に対して、西條は特に返事はせず
「……、…____」
宙に舞う煙草の煙を眺めながら、ただ黙って不死川の言葉に耳を傾けていた。
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作者名:雫 | 作成日時:2023年7月19日 18時