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気づけば、私は即座に鞘から刀を抜き



目の前で怯える少年を、開き切った自身の瞳孔で捉えていた。



そして、少年の首目掛け、刀を振り翳そうとすると



『___美琴…落ち着け、なんて面してンだ、お前…。』



私の腕を力強く握り、顔を歪めながらも笑みをこぼすアイツの姿があった。



アイツはそのまま私を後方へと押し込めた後、少年から刃物を取り上げ



『お前もなァ…こんな物騒なモン、いつまでも待ってンじゃねぇ…。___』



そう言ってアイツは少年を落ち着かせる為か、腹部へと拳を入れ、意識を失わせた。



その場に倒れ込む少年に対して、私の殺意の音は未だに鳴り止まず



『颯斗…コイツ…お前、刺したんだぞ…?何故護る…そんな価値、コイツにある訳な___』



すると、アイツは私の言葉に被せるようにして



『俺は…正直、このガキに限らず…見ず知らずの奴に…護る価値があるかどうかなんて…、知ったこっちゃねぇ…。』



アイツはじわじわと血が滲む腹部を片手で抑えながらも、真っ直ぐな視線をこちらへと向けて



『けどなァ…俺は…お前には、護る価値があると思ってる…。俺が今護ったのは…このガキじゃなくて、お前だ…美琴。____』



その言葉に思わず目を見開くと同時に



怒りで血が滲むほど、力強く握りしめていた刀をその場に落とす。



『お前が…道踏み外しそうになった時…それ止めるのは、ダチの役目だろ…俺は…その役目、果たしただ…け…ッ…、___』



そう言ってアイツはその場に倒れ込み、朦朧とした意識の中ではありながらも



その瞳にはしっかりと私の姿を捉えており、










『俺がいなくても、お前はお前でいられる』





『自分を見失うな』










そんな言葉を遺して、アイツは静かに息を引き取った。



……颯斗、君はそんなに頭の悪い人間だったか。



今の私の状態を見て…何故、そんな言葉が遺せる。



『…大丈夫な訳…ないだろ…、…ッ____』



吐き捨てるようにして告げたその言葉は、アイツに届く事などなく



強く握りしめた拳からは…ただ血がだらだらと、滴るばかりだった。



















その後、アイツの死に関して上から問われはしたが



下弦の鬼との戦いで命を落としたと…そう告げた。



決して、私はあの少年を庇った訳ではなく



アイツが助けたあの命を、無駄にしたくなかった。



私は颯斗を殺したあの少年を、一生許しはしないが



一生殺しもしないと…そう決めた。

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作者名: | 作成日時:2023年7月19日 18時

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