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____あれは…厳しい冬の寒さを乗り超え、春の兆しが見え始めた時期の事。



アイツとの任務で下弦の鬼と対峙し、頸を斬り落とした後



『颯斗、その怪我…大丈夫か。傷が深いようだが…、』



そう声を掛けるものの、アイツは何事もなかったかのような顔をして煙草を取り出し



『これくらいなんて事ねぇ。つーか…お前のその怪我もなかなかだろ、俺より自分の身体心配しろ。』



辺りに煙を漂わせるアイツと共に、帰路に着こうとすると



近くの民家から悲鳴が聞こえ、互いに深手の傷を負ってはいながらも、すぐさまその場所へと向かう。



そこには、鬼に襲われ助けを求めている少年の姿があり



颯斗はすぐさま鞘から刀を抜き、鬼の頸を瞬時に捉え



『 風の呼吸、肆ノ型 昇上砂塵嵐 』



頸を斬り落とし、少年のもとへと駆け寄った。



私はそんなアイツの姿を目にしながら、



『(あの怪我で…あの威力の技を出せるなんて…、やはりアイツは凄いな…。)』



そんな思いを抱きながら、アイツのもとへと向かい



『もうすぐ隠が来る筈だ。それまで…その少年を保護___』



そう言いかけた時だった。



『…ッ…、…___』



突如、アイツがその場へ倒れ込み



目の前の少年は、血の付着した刃物を手に持っていて



『………は、?』



理解が追いつかず、思わずそんな声が漏れてしまう。



すると、少年は震える手で刃物を持ちながら、こちらに鋭い視線を向けて



『何で…なんで、母さんを殺した…お前らは、人殺しだ…!母さんを返せ…っ…!!』



頸を斬り落とした鬼へと目を向けると、醜い姿ではありながらも…その鬼は女性の着物を身に纏っていた。



少年はその母親を鬼だと認識し、先程まで助けを求めていたのにも関わらず



今は酷く動揺した様子で、母親を殺された事に憤り、こちらに刃物を向けていた。



私はそんな少年を目にし、呟くようにして口を開く。



『…随分と…勝手すぎないか…、』



君が助けを求めていたから…アイツは、剣を振るった。



それなのに…鬼となった母親が殺された事を知ると、怒りに任せアイツを刺した。



目の前の少年からは、悲しみと怒りと…憎悪の音が鳴り響き



命を助けたアイツに対する、感謝の音などは全くなく



つくづく人間は…残酷で、非道な生き物だと再認識した。



そんな奴等を助けて何の意味がある、何の価値がある。



















……もう、殺してよくないか。

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作者名: | 作成日時:2023年7月19日 18時

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