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また、アイツは私程ではないが…酒が飲める口であったため



よく飲み屋を訪れ、酒を酌み交わしていた。



柱就任直後の柱合会議では、互いに二日酔いが凄まじく



お館様を前にしているというのにもかかわらず、盛大に吐き、悲鳴嶼さんに怒られた。



お館様には『仲が良いね』と笑顔で言われ、許してもらったものの



悲鳴嶼さんには悪霊が憑いているのではないかと疑われ、岩屋敷へ呼ばれたかと思えば



『おい…美琴、お前があの時…俺に強い酒飲ませなければ…こうはならかった…今すぐ謝罪しろ…。』



『飲み屋に連れ回したのは颯斗だろ…、私は会議の前日だから…辞めようって言った筈だ…君こそ謝罪しろ…。』



互いを責め合いながら、あの日は滝行をさせられた。



















それから…アイツとの思い出の中で、一番印象に残っているのは



アイツは毎年、私の誕生日を盛大に祝ってくれて



私が好きな酒を大量に買ってくると同時に、異常な程のご馳走を次々と差し出し



『量もなかなかだが…これ、相当高いだろ…。金、使いすぎじゃないか…?』



『別に高くねぇだろ。俺は昔から、これよく食べさせられてたしよ…いいから早く食え、誰の為に用意したと思ってんだ。』



『(そういえば…コイツ、家金持ちだもんな…。)』



アイツの金銭感覚は常人とは逸脱しており、



手に余る程の贈り物を眺めていると、アイツは少し視線を落として



『今まで…ダチの誕生日なんて、祝った事なくてよ…やりすぎたか、…?』



不意にそんな事を言われ、思わず目を見開くと同時に



『いや…嬉しい。ありがとう、颯斗。』



『ただ…あれだな、これは来年…君へのお返しが大変そうだなと思ってな…、』



そう言うと、アイツは少し驚いたような表情をした後



『期待してる』と言って、柄にも無い笑顔を見せた。
















アイツには、戦場で支えてもらっていたのは勿論の事



精神的にも支えられ、アイツのおかげで酷く荒んでいた私の音は、随分と和らいだ。













『和らいだ』…と、そう思ってはいたが










かつての衝動に、ふたたび駆られる事になったのは…アイツが死んだあの日。



アイツは鬼の手ではなく、人の手によって殺された。



それを目の前にして、この衝動を抑えられる訳がない。



『(コイツ…殺そう。___)』



私の音は、やはり…あれから変わる事などなく



あの日は殺意の音だけが、しきりに鳴り響いていた。

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作者名: | 作成日時:2023年7月19日 18時

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