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すると、アイツは私の方へと向き直ったかと思うと



咥えた煙草を手に取りながら、口を開いて



『お前、自分からそんな音しかしないと思ってるだろ。…もっと自分の良い所に目向けろ、お前はちゃんと…いい音鳴ってるからよ。』



そんな事を言われはしたが、実際アイツには…私の音など聞こえてる筈もなく



『慰めてるつもりか…?根拠もなしに、そんな事言われてもな…。』



『根拠ならある、お前よく飯奢ってくれるだろ。…だからお前は、いい音するに決まってンだよ。』



随分と…説得力に欠ける根拠ではあるが、



そんなアイツのいい加減な言葉に、思わず笑みがこぼれ



『正確には…奢らされてる、だけどな。___』



穏やかな風に吹かれながら、アイツとそんな会話をした事は…今でも覚えている。















思えば、私はアイツにずっと支えられ続けていた。



当初、アイツは私に対して嫌悪感を示す以外、何を考えているのかよく分からなかった。



…とはいえ、アイツは唯一の同期で、任務も一緒に行く事が多かったため



『神代、任務も済んだし…今から飯行こう。』



親睦を深めようと食事に誘うが、アイツは露骨に嫌そうな顔を向け



『何で俺が…お前みたいな奴と、飯行かなきゃいけねぇンだ…断る。』



そう言われはしたものの、私はアイツに対して



『神代、友達いないだろ。』



そう告げると、アイツは身体をピクリと動かしたかと思えば、咄嗟に口を開いて



『ンなモン…要らねぇ。いるだけ邪魔だろ、』



実際…アイツは、あまり人と連んでいる様子がなく



我が強い事もあってか、周囲になかなか馴染めていない印象だった。



決して、そんなアイツを可哀想だと思った訳ではないが



時折みせる、寂しそうな横顔が…ふと頭の中をよぎり



『君は分かってないな…、友達と食べる飯は美味いぞ。って事で、行こうか。』



『は…?だから、何でお前と……おい、離せ…ッ__』



そう言って抵抗するアイツの首根っこを掴み、食事処へと足を運んだ。



アイツは無理矢理連れてこられ、終始不貞腐れた様子ではあったものの



思いの外楽しんでくれていたのか、その日以降…アイツは私を見かけると



『西條、飯奢れ。』



飯を奢れとよくたかり、半ば強引に私を引き摺り回していた。



『(飯だけ求めにくる…犬みたいだな…。)』



そんな事を思いながらも、アイツと共に食事をする時間は、私にとっても楽しいものだった。

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作者名: | 作成日時:2023年7月19日 18時

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