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それを自覚してからは、戦場に立つことが苦痛だった。



刀を握り、滴る血を目にすると…あの日の音が蘇り



鼓動が高鳴ると同時に、醜い音で全身を蝕まれ、思わず耳を塞ぎたくなる。



『(…落ち着け…呑まれるな…、…)』



何とか自分にそう言い聞かせるものの、その場に立つ事がやっとの状態で



こんな醜い音を出してしまう自分自身に嫌悪感を抱き、



激しい自責の念に駆られ、刀から思わず手を離した。















私はそんな自分の音に、嫌悪感を抱く一方で



人の音に関しては、非常に敏感になってしまい



以前、颯斗との任務で…鬼から父親とその娘を助けた事があった。



二人とも意識は失っていたが、鬼による外傷はなく



隠が到着するまでの間、その二人の側に付いていると



ふと、ある事に気がついた。



その娘の身体には、隠すようにして痣や傷痕があり



父親からは…残虐的な音が微かに鳴り響いていた。



この父親が日常的に虐待を行っている事を悟ると、












『コイツ、生かす価値…あるか?』












気づけば私は颯斗に対し、そんな問いを投げかけ



開いた瞳孔で父親を捉え、腰の刀に手を携えていた。



颯斗が静かに私を見つめる中、私は我に返り



『…悪い、…疲れてる…みたいだ……。』



そう告げて、腰に携えていたその手を下ろす。



すると、颯斗はそんな私に近付いたかと思うと



懐から箱を取り出し、煙草を一本私へと差し出す。



『…これ吸っとけ、落ち着くから。』



颯斗は私を責める事なく、ふっと笑いながらそう告げるだけで



『いや…遠慮しておく。…煙草は…嫌いだ、___』



私はいつものようにその煙草を拒否し、静かに視線を落とした。















私は…アイツにだけは、既に過去の話をしており



アイツは引くどころか、こんな私に同情さえしてくれた。



『君は…私が怖くないか…、私は…自分が怖い…。』



『君は分からないと思うが…私からは…時折、残虐的な行為を顧みない…そんな「人殺し」の音がする…。』



任務の帰り、そんな話を持ち掛けると



アイツは煙草をふかし、宙を舞う煙を眺めながら



『「人殺し」…だなんて言うけどよ、実質お前は誰も殺してねぇだろ。お前はお前だ、人殺しなんかじゃねぇ。』



…確かに、アイツの言う通りではあるが



私は、人を殺そうとした事が何度かある訳で



『(いずれ…私は、本当の人殺しになってしまうんだろうな…。____)』

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作者名: | 作成日時:2023年7月19日 18時

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