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それからは自身から込み上げる、その音に身を委ねた。



気づけば…鬼の身体中には刃物が刺さり、身動き一つ取れない状態になっていたが



なかなか死なず、その鋭い眼光を私へと向ける。



不思議に思いながらも、私は鬼の両目を刃で突き刺し



『(まァ…そのうち、死ぬだろ。)』



『(コイツが死んだら…外に出て、嫌な音がする奴等は…皆殺そう…人だろうがそうでなかろうが…もう、どうでもいい…。)』



その時既に私の心は…音は、酷く荒んでいた。



深い悲しみと絶望と…憎悪と殺意、そんな音が渦巻く中



ふと、部屋の中にあった鏡へと目を向けると…そこに映っていた私はまるで別人で



返り血を浴び、醜い鬼を目の前にしているのにも関わらず



そこに映る私の口角は、自然と上がっていた。



憎き奴等が死んだからだろうか…、ようやく解放された安堵感からだろうか。



おそらく…そうでは無くて、



私は自分の中で高鳴る音が、黒い感情だけでは無く



その背後に、異常なほどの高揚感が潜んでいる事に気付き



『(…狂ってる…な、…____)』



体力と精神の限界を迎え、その場に倒れ込んだ。



私は最愛の両親と平穏な生活を失った他に、



純粋無垢であった自身の音を、あの日…失った。



















その後、駆け付けた鬼殺隊によって私は保護され



彼らは婚約者とその親族を失った私に、同情の目を向けると同時に



深い憎悪を感じさせるような、鬼へと突き刺したその刃を目にし



私が鬼に対して、強い憎しみを抱く同士だと思い込み



隊士のうちの一人が、私に育手を紹介してくれた。



当初、鬼殺隊に入る予定など微塵もなかったが



保護された事で、一旦落ち着きを取り戻した私は



『(人斬りになるよりかは…鬼狩りの方がマシか…)』



人に対する殺意の音を腹の奥底へと鎮め、



行く宛もなかった為、そのまま育手のもとに引き取られ、そこで修行を積み



最終選別を難なく乗り越え、鬼殺隊へと入隊した。



















その後は、あの日の衝動が湧き上がる事はなく



着々と任務をこなしていたつもりだったが、



あの時、颯斗の言葉でようやく気付いた。



『 お前、鬼の頸斬ってる時…楽しそうに笑うよな。 』



当初、戦場から高鳴るあの醜い音は



鬼から鳴るものだと勝手に思い込んでいたが



『(あれは…私の音だったのか…。)』



私はまだ…あの日鳴り響いていた、自身の『音』に囚われ続けていた。

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作者名: | 作成日時:2023年7月19日 18時

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