春雷に散る花【不死川実弥】 (ページ36)

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(No side)

その頃、入り組んだ森の奥深くでは

二体の鬼が辺りを見渡しながら、話をしている様子で

「___ッ、あの女！何処に行った！？」

「技も速ければ、逃げ足も速いのね……絶対、逃がさないんだからッ…！！」

獲物を逃し、気が立っている忌羅に対し

童磨は宥めるようにして、穏やかな口調で声を掛ける。

「その内すぐ見つかるよ。あの怪我じゃ…そう遠くには逃げきれない。」

童磨がそう告げると、忌羅はふんと鼻で笑うようにして

「確かに…そうね。あの女、私の攻撃を避けきれてなかったし……やっぱり私の方が、あの女より速さは上ね。柱なんて、大した事ないわ。」

馬鹿にするかのような口調で話す忌羅に、童磨は静かに視線を向けたかと思えば

「…忌羅、また君の悪いところが出ているよ。」

冷ややかな笑みを浮かべ、そう告げる。そんな童磨に対し、忌羅は思わず

「は…？それ…どういう意味よ、」

そう尋ねると、童磨はすかさず口を開いて

「油断しすぎって事さ。君は…彼女がわざと避けなかった事に、気づいてないのかい？」

「彼女が技で受け流した攻撃…交わした攻撃は、殆ど俺の攻撃だ。どちらの攻撃が後々致命傷となるか、あの状況下で咄嗟に判断するなんて……彼女、賢いね。」

忌羅はそんな童磨の言葉に、眉をピクリと動かし

「じゃあ…何…？つまり、あの女は…私の術なんて、大した事ないって…思って…わざと避けなかったって事…？」

微かに口を開き、童磨が告げた言葉を繰り返したかと思えば

忌羅の怒りは先程よりも増し、拳を握りしめながら

「許せない許せない許せない…あの女…絶対、殺して…腹の底に収めてやる…ッ！！」

怒りを露わにする忌羅とは対照的に、童磨はニコニコと笑みを浮かべながら

「忌羅、それは待ってよ。俺だって彼女が欲しい…どちらが喰べるかは、彼女を殺した後で改めて話し合____」

童磨がそう言いかけた時だった。

「……、…____」

二体の鬼の前には、いつの間にか西條が立っており
　

微かな風で揺れる前髪の隙間からは、眩い金色の瞳が鬼の姿を確と捉える。

忌羅は怒りに任せ、雷の血鬼術を繰り出す前に

西條が足に酷い怪我を負っている事に気がつくと、

忌羅はそれを指差し、嘲笑いながら

「私の術…随分となめてたみたいだけど、その足…もう使い物にならないでしょ？痛いでしょ？…本当、馬鹿な女。____」