検索窓
今日:294 hit、昨日:22 hit、合計:22,775 hit

34 ページ34

***

(西條 side)



「(…ッ…、…)」



ズキズキと脈打つような怪我の痛みに耐え、地面へと刀を突き刺しながら



ダラダラと血が滴る足を引き摺り、入り組んだ森の奥深くへと進む。



木々を背に、身を潜めるようにしてその場に座り込み



右肩から腕にかけて負った怪我と、足の怪我を眺めながら



「(判断を…誤った。…____)」



静かにため息をつき、思わず視線を落とす。



『上弦』と『下弦』二体の鬼に追い詰められたあの後



咄嗟に刀を構え、呼吸技を出したものの



肺の空気は残っておらず、技の威力は格段に落ち



全ての攻撃を受け流し、交わす…だなんて事は出来る筈もなかった。



その後は…何とか奴等の隙をつき、その場を離れる事が出来たものの



「(見つかるのも…時間の問題だろうな…。____)」



















私は…あの『下弦』の鬼を斬ったつもりでいたが、



背後に現れた『上弦』の鬼に気を取られ、頸を斬り落とす直前で、その刃を抜いてしまった。



その後は…目の前の『上弦』の鬼にだけ、集中していた事もあり



すぐ背後まで、あの雷の血鬼術が迫っていた事には…全く気づいていなかった。



『下弦』の鬼に一瞬目を向けた矢先、扇を持つ鬼に突き刺した刃は…いつの間にか抜かれ、



「(あの時…『上弦』の鬼の頸だけは…即座に跳ねておくべきだった……。)」



長年、柱を務めているというのに…自分のこの未熟さには、呆れてしまう。



それと同時に…もし、耳が聴こえていたら



背後から迫り来る『下弦』の鬼の存在に、気付く事が出来た筈だ。



そんな後悔を抱え、怪我の痛みに耐える中であっても



相変わらず…私の頭の中には、あの事しかなくて



「(煙草…吸いたな…、____)」



懐から箱を取り出し、残り一本となってしまった煙草に静かに視線を落とす。



「(本来であれば…早く戻って…煙草を買いに行って…、…あとは……そうだ…、)」



「(実弥に渡す…おはぎを買って……あの日の詫びを…入れに行こうと、思ってたんだがな……)」



「(どうやら…それは少し、難しいようだ…。)」



そんな事を思いながら、手に取った煙草の箱を、一旦地面へと置き



「(とりあえず…止血、しておくか……)」



着ていた羽織を刀で破き、直ちに止血を行った。

35→←33



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (30 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
82人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 不死川実弥
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2023年7月19日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。