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不死川はそんな西條との会話を思い出した後
「アアア痛い痛い痛いよォォ…!!」
今もなお、目の前で泣き喚いている善逸に対し
「(さすがに…コイツ…、じゃねェよなァ……?)」
思わず眉をひそめ、訝しげな目を向ける。
それと同時に、先ほど善逸が使っていた型が全て『壱ノ型』であった事を思い出すが
「(偶々…だよなァ…?俺よりも長く柱やってる西條が…コイツを選ぶとは思えねェ…。)」
西條が話していた『剣士』が善逸である筈がないと思い、終始受け入れ難い視線を向けていた。
その後、不死川は手当を受ける隊士たちに背を向け
一人先に山を降り、帰路へとつく道中
先程思い出した会話の中で、西條が自身の『音』について話していた時の事が頭に浮かぶ。
『私の音は…そんなに、いいものじゃない。』
そんな西條の言葉が、ふと頭の中によぎると同時に
『実弥、いい太刀筋だ。さすが風柱、頼もしいな。』
『どうした、浮かない顔して。今から飲みにでも行くか、話…聞くよ。』
『この任務終わったら…帰りに甘味処にでも寄るか。実弥の好きなおはぎ、一緒に食べよう。』
西條が時折掛ける言葉は、何処か温かみを帯びており
不死川は今まで掛けられてきた、言葉の数々を思い出しながら
「(アイツは…自分自身の音について、ああ言ってたけどよォ…、)」
「(きっと…西條の音は…_____)」
不死川がそんな事を思っていると、
何やら忙しない様子の鎹鴉が、こちらへと飛んできて
「(あれは…確か、西條の鎹鴉だよなァ…)」
鎹鴉が口を開いた次の瞬間、不死川は思わず目を見開き
「____ッ…、!」
腰に携えた刀を強く握り締め、即座に現場へと向かっていった。
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『カァァ不死川実弥ッ!増援ッ!増援ッ!!直チニココカラ東ニアル森ヘト向カエェェ!!』
『西條美琴ガ『下弦の弐』『上弦の弐』と遭遇ッ!!』
『西條美琴ハ右肩、右腕ヲ負傷ッ!右足ニハ重度の怪我!極メテ危険ナ状態ッッ!!』
『不死川実弥、至急ッ!至急ッ!!西條美琴ノモトヘ向カエェェ!!!____』
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作者名:雫 | 作成日時:2023年7月19日 18時