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西條は動揺した様子の童磨へと、目を向けながら
「(コイツ…私に斬られる訳がないとでも思ってたのか…?随分と…舐められたものだな。)」
「(まァいい、次こそは…頸を狙う。___)」
鋭い視線を向け、息を吸い込もうとしたその時。
「(…何だ……?)」
何か危険を察知したようにして、西條の身体が突如強張る。
「(今…息を吸い込んでは…いけない気がする…、)」
いつの間にか、辺りには霧状の冷気が漂っており
既に頭部を再生させた童磨は、目を輝かせながら
「君、勘もいいのかぁ…!よく息を吸わなかったね!」
「この冷気を吸うと、肺胞が壊死してしまうんだ。君の苦しむ姿…見たかったけど……まァいいか。」
「今からたくさん、見れるからね。___」
そう言って、ニコッと微笑んだかと思えば
「 血鬼術 蓮葉氷 」
黄金の扇子を大きく振り、蓮の花のような氷を次々と生み出し、西條を追い詰めていく。
凄まじい冷気を放つその攻撃を、西條は交わしながら
「(今、肺に残ってる空気だと…技を出せるのはせいぜい二回…その間に…仕留められるか…?)」
上弦の鬼を前に、思わず臆してしまいそうな身を鼓舞し
「(いや、やるしか……ないだろ。___)」
刀を力強く握り締め、童磨の姿を捉えた後
「( 雷の呼吸、陸ノ型 電轟雷轟 )」
激しい雷のような斬撃を、四方八方へと繰り出し
童磨はそんな西條の攻撃に対抗するかのようにして、
「 血鬼術 散り蓮華 」
扇を振り翳し、氷の花びらのような斬撃を無数に繰り出していく。
ビリビリと迸る雷の呼吸技と、鋭利な氷の血鬼術がぶつかり合う中
西條は童磨から一秒足りとも目を離さず、一瞬の隙をつき
肺に残る空気全てを使い、足を力強く踏み込みながら
「( 雷の呼吸、壱ノ型…___)」
「( 霹靂一閃 神速 )」
爆発的なその速度で、童磨の頸へと刃を捩じ込み
そのまま頸を斬り落とそうとしたその時。
「 ___アンタ、後ろガラ空き。」
嘲笑う声が西條の背後で響くと同時に、殺伐とした雷の血鬼術がすぐそこまで迫り、
「(待て…、私は…確か…この鬼を____)」
西條が忌羅に気を取られた隙に、童磨は自身の頸に捩じ込んだ刃を抜き取って
「どうやら…君は、ここまでのようだね。」
「楽しかったよ、ありがとう。____」
柔らかくも残酷な笑みを浮かべ、扇を振り翳した。
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作者名:雫 | 作成日時:2023年7月19日 18時