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(No side)
某日、西條は任務へと向かう途中
見覚えのある…金色の短髪の少年が目に入り、ひらひらと手を振りながら側へと寄って
【 善逸、久しいな。元気か、 】
そう尋ねると、善逸はすぐさま文字を書き綴り
【 元気です、美琴さんは相変わらずお綺麗ですね!! 】
目を輝かせながら西條を見つめる善逸に対し、西條は苦笑を浮かべ
「(この感じ…君も、相変わらずだな…。)」
そんな事を思いながら、善逸へと視線を向ける。
その後、善逸との会話を進める中で、西條がふと視線を落とした際
善逸が足に怪我を負っている事に気がつき、
【 引き留めて悪いな、任務帰りだったか 】
【 早くその怪我、蝶屋敷で診てもらうといい 】
【 雷の呼吸は、速度重視だからな。足の怪我は後々、命取りになる。】
【 あまり足に負担を掛けすぎるなよ、お大事に 】
そう綴った後、西條はそのまま歩き出し
すれ違い様に善逸の頭にぽんっと軽く手を置いて、その場を立ち去ろうとする。
すると、後方から羽織を引かれる感覚があり
振り返るとそこには、紙を持って西條に視線を向ける善逸の姿があった。
【 美琴さんも…あまり、無理をしすぎないで下さいね 】
【 任務、お気をつけて 】
丁寧な文字でそう綴り、柔らかく微笑む善逸を目にし、
西條はそんな善逸の思いに返すようにして、ふっと微笑んだ後
背を向けて、そのまま任務へと向かっていった。
その道中、咥えた煙草に火をつけながら
「(鬼殺隊は…やはり、心の優しい奴が多いな…。)」
そんな事を思うと同時に、…先日、不死川に手を掴まれた時の事を思い出し
「(……羽織の…礼くらいは、言うべきだったよな。)」
何か思い詰めたような顔をする不死川の思いには、気づいていないものの
引き留められたその手を振り解いた事には、少々罪悪感を抱えていた。
「(あとで…おはぎでも買って、詫び入れるか…。)」
そんな事を思いながら、煙草をふかし歩いていると
紙を咥えた鎹鴉が肩へと止まり、その紙を手に取って、目を通す。
そこには、今回の任務における…鬼の追加情報が書かれており、
「(『十二鬼月の可能性が高い』…か、)」
西條は宙に舞う煙を眺め、煙草の火を一旦消し止めた後
「(……まァ、何とか…なるだろ。___)」
鬼の潜む鬱蒼とした森の中へ、足を踏み入れた。
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作者名:雫 | 作成日時:2023年7月19日 18時