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____そんな想いとはまた別に、
俺はもう一つ…西條に対して思う事があって
先程…胡蝶が言っていたように、西條は人を頼る事が全くと言っていい程ない。
涼しい顔をして、何でも卒無くこなし
弱音を吐く事は勿論、辛い顔をみせる事も一切ない。
音を頼りに、誰かを気遣い
慰めの言葉を掛ける訳でもなく、煙草をふかしながら、側に寄り添い話を聞くだけ。
俺はそんな西條に、何度も助けられ…救われた。
だから、西條がしてくれたように、俺も…西條の力になりたいと…ずっと思い続けているが
西條は…俺に何も、言ってはくれない。
本当に、辛い事や思い悩む事がなくて、
いつものように煙草をふかし、酒を飲んで…それなりに楽しく生きているのであれば、それでいい。…けれど、
西條は時々、任務を終えた後…刀を鞘へと収めながら
『…実弥、先戻ってろ。私は後で行く、』
背を向けて、静かにそう告げる事がある。
その時の西條は…いつもと少し、雰囲気が違うように感じて
表情こそ見えないが、その背中は…酷く寂しげに見えた。
『お前、時々そう言って…何処かに行くよなァ…、』
『もし…何か、抱えてンならよォ…少しは俺を頼___』
そこまで言うと、背を向けていた西條は振り返り
淀みのない瞳で俺を捉え、微笑を浮かべながら
『問題ない、気にするな。__』
はっきりとそう告げて、俺の前から去っていった。
見え透いた虚勢ではなく、随分と徹底したその防壁に…距離を感じ
去って行く西條の後ろ姿を、ただ見つめる事しか出来なかった。
____なァ…西條、俺は…そんなに頼りないか。
どうして、いつも何も言ってはくれない。
お前が『辛い』『苦しい』『助けて欲しい』…と、
そう一言…言ってくれれば、俺はいつだって手を差し伸べる。
必ず…お前を救ってみせる。だから、____
……そんな俺の思いは、届く筈もなく
西條に振り解かれた手を、静かに見つめながら
「(結局…何も、言ってくれねェンだなァ…。)」
西條が頼ってくれないのは、俺が不甲斐ないからだと
煙を纏う西條の後ろ姿を見つめながら、
今日もまた…自分を責めた。
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作者名:雫 | 作成日時:2023年7月19日 18時