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***
(不死川 side)
____今から数時間ほど前、任務を終えた俺は、蝶屋敷へと向かい
「不死川さん、何ですかこの怪我は…無茶をするなと、あれ程言っていますよね?何度言えば、分かるんですか。」
「………、」
笑顔でそう告げながらも、何処となく…圧を感じる胡蝶から手当てを受けていた。
手当てを終えた後、胡蝶は俺に
「また、同じような無茶をしたら…今度こそ許しませんからね。覚悟してください、」
得体の知れない薬品が入った注射器を見せつけ、微笑みながらそう告げた。
特に返事はせず…そのまま診察室を出ようとすると、胡蝶に呼び止められ
「あ、そういえば…不死川さんにお聞きしたい事があるんですが…、___」
「西條さんの…事で。…不死川さん、彼女の耳が聴こえなくなったあの日、一緒に任務に行かれていましたよね。」
「その時、彼女に…何か変わったことはありませんでしたか。」
そう尋ねられるが…特にこれといった心当たりはなく、それを胡蝶へと伝える。
「そう…ですか…、分かりました。ありがとうございます。」
視線を僅かに落としながら、そう話す胡蝶に対して、
「なァ、胡蝶…アイツ…ずっとあのまま…なんて事、ないよなァ…?」
そう尋ねると、胡蝶は少し困ったような微笑を浮かべて
「残念ながら…現時点で、彼女のあの症状を治す事が出来るかどうかは…分かりません。」
その後、少し間を置いてから、胡蝶はふたたび口を開く。
「ただ、症状の原因は…血鬼術ではない事は確かで、」
「そうなると…恐らく、耳が聴こえなくなった原因は…彼女自身にあるんじゃないかと…私はそう思ってます。」
静かにそう告げる胡蝶と…視線が重なったかと思うと、胡蝶は俺に
「不死川さんは…彼女が弱音を吐いたり、辛そうな顔をしたりしているのを…見た事がありますか。」
その問いかけに対し、少し考えた後で首を横へと振る。
胡蝶は「私も…ありません。」と告げた後、
「彼女は…彼女なりに、何かをずっと抱えていて…その負荷が掛かり続けた事によって、耳が聴こえなくなってしまったのではないかと…。あくまで…推測ですが。」
「西條さんは…もう少し、私を…あなたを…、他の誰かの事を、頼ってもいいと思うんですけどね…。」
俺は…そんな胡蝶の言葉を聞きながら、
「………、…____」
下唇を噛み締め、膝の上に置いた拳を強く握りしめた。
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作者名:雫 | 作成日時:2023年7月19日 18時