20 ページ20
それから、アイツとは何かと一緒にいる事が多くなり
当初『柱になりたくない』と言っていたアイツは、私の階級が『甲』まで上がった事を知ると、
『お前…このままいけば柱になるよな……お前がなるなら、俺もなるか。』
『本家の思惑通りになるのは…気に食わねぇが…お前だけが柱になるってのも、気に食わねぇ。』
『何だそれ、君は私に柱になって欲しくないのか…?…意外と私に対して、対抗心あったんだな。』
そう告げると、アイツはきょとんとした顔で
『ねぇよ、お前より俺の方強いだろ。』
コイツは割と…自信家なところがある。まァ…事実ではあるから、否定はしないが…
すると、アイツは私に視線を向け、ふっと笑みを溢しながら
『お互い柱になれば…会う機会も多そうだしな、今後もお前に飯奢ってもらえるって訳。』
私はそんなアイツの言葉に、思わず目を見開き
『君が…私の事を、そこまで好いていたとはな…驚いた。』
そう告げると、アイツは咥えていた煙草を手に取って、私の顔を覗き込む。
そして、私の顔に煙草の煙をふーっと吹きかけ
『勝手に自惚れてろ、馬鹿女。』
むせる私を気に掛ける事なく、意地の悪い笑みを浮かべながらそう告げた。
その後…今まで散々手を抜き『癸』止まりだったアイツは
たったの一ヶ月で『甲』にまで上り詰め、下弦の鬼の頸を斬り落とした。
鬼殺隊に入隊してから、一年ほどの月日が経った頃
私たちは同時期に『鳴柱』『風柱』へと就任した。
柱になってからも、アイツとの交流は続き
この先…どんな事があっても、誰よりも逞しいアイツであれば
少なくとも私よりは長生きしてくれるだろうと…そう思っていたのに、
『___美琴、…お前なら…もう、大丈夫だろ…。』
『俺がいなくても…お前は…、ちゃんと…お前でいられる筈だ……だから…自分を、見失うんじゃねぇ…ぞ…___』
そう言い残して、アイツは死んだ。
『(何が、大丈夫だ…馬鹿野郎。)』
アイツの葬儀後、そんな事思いながら、咥えた煙草に火をつける。
久々に吸ったそれは、相変わらず口には合わず…気分は最悪でしかなかった。
____アイツが死んでから六年。
私はあの日から、アイツと同じ銘柄の煙草を吸い続け
『(アイツの言った通り…、直に慣れるもんだな。)』
宙へと舞う、煙草の煙にふと目を向けながら、
彼の亡骸に…今もなお、縋り続けている。
82人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:雫 | 作成日時:2023年7月19日 18時