検索窓
今日:317 hit、昨日:22 hit、合計:22,798 hit

19 ページ19

その後も、アイツは自ら表立って剣を振るう事はなかったものの、



『(ッ…、今日は…一段と音が____)』



私が少しでも顔を歪めると、アイツはその変化に気づき



緑色に光る日輪刀を鞘から抜いて、



『 西條 』



私の名を呼び、好戦的な笑みを浮かべた後



『 お前は…俺の音だけ聞いとけ、…いいなァ。___ 』



『 風の呼吸、肆ノ型…昇上砂塵嵐 』



鋭い眼光を向けながら、鬼のもとへと斬り込んでいく。



私は…今まで、様々な人間の音を聞いてきてはいたが、



アイツから高鳴る音は…周囲の雑音を全て掻き消す程の、凄まじい重圧で



荒々しくも…揺るぎない信念を感じさせるような、その音に圧倒され…強く惹かれると同時に、



『 雷の呼吸、参ノ型…聚蚊成雷___ 』



私は…アイツが居てくれたから、音に囚われず…剣を振り続ける事が出来た。













____任務が終わり、帰路へと着く道中



私は煙草の煙を纏いながら、先を歩くアイツに



『…ありがとう、颯斗。また君に、助けられた。』



そう声を掛けると、アイツは立ち止まって、こちらへと視線を向け、



『礼なんて、言われる筋合いねぇよ。…それよりお前、何気安く名前で呼んで___』



私はそんなアイツの言葉を遮るようにして、微笑を浮かべながら



『君は…本当は、苗字で呼ばれるの好きじゃないだろ。私なりに、気を遣ったつもりだったんだがな。』



アイツは…自分が『神代家』の一族である事を酷く憎み、恨んでいた。



共に任務をする中で、本家の愚痴をよく溢すと同時に



『神代』と名を呼ぶ度に、少し寂しそうな目をして、視線を落としていた。



『まァ…嫌なら、苗字に戻す。嫌でないのであれば…名前で呼んでも、問題ないだろ。』



『………、』



アイツは少しの沈黙の後、煙草の煙を吐き出しながら、背を向けて歩き出し



私の言葉に対して、特に返答はしなかったものの



『…今から飯行くぞ、美琴。金はお前持ちな、』



『この前も…奢ったろ。たまには君が奢ってくれ、…人の金で食べる飯は美味いからな。』



そう言うと、アイツは軽く笑いながら



『は…ッ、間違いねぇなァ……分かった、今日は俺が奢ってやる。その代わり、次はお前が高い飯奢れ。』



『何でそうなる…、まァ…覚えてたらな。次は奢るよ、___』



そう言った後、何処か機嫌の良さそうなアイツのもとへと向かい



穏やかな風が吹き抜ける中、肩を並べて歩き、その場を後にした。

20→←18



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (30 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
82人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 不死川実弥
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2023年7月19日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。