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アイツはそう告げた後、続けて
『そもそも俺は…望んで鬼殺隊に入った訳じゃない。今すぐにでも辞めてぇよ、こんな所。』
私はそんなアイツの言葉に目を見開くと同時に、思わず口を開いて
『そうか…、奇遇だな。私も…鬼殺隊には、望んで入った訳じゃない…。___』
それからは、互いの生い立ちについて語り始めた。
…アイツは、代々産屋敷一族に仕える名門『神代家』の息子で
幼い頃から、柱になる事を強要され、息苦しい環境の中で育ってきたと話していた。
『柱になったら…アイツらの思い通りだろ。だから俺は…階級上げずに、ずっと下っ端でいて…アイツらに恥欠かせてやりてぇんだよ。』
そうは言いつつも…最終選別で目にした、アイツの実力は明らかに格上で
『君は…いずれ、柱になるだろうな…下の階級、維持する方が難しいんじゃないか。』
そう尋ねると、アイツは『まァな』と一言告げた後、私に視線を向けて
『だからお前に、押し付けてンだよ。俺の為にも…なるべく沢山鬼斬ってくれ、西條。』
『…随分と、人任せだな。』
いい加減なアイツの言葉に、思わずふっと笑みが溢れる。
その後は…私の生い立ちについて、…アイツに話した。
過去の事を誰かに話すのは…この時が初めてで、
『普通…引くよな…、こんな話…___』
一通り話し終えた後、視線を落としながらそう告げると
『別に、引かねぇよ。…苦労してんだな、お前も。』
『最近様子が変だったのも、さっき倒れたのも…それが原因か。…何とかしてやりてぇけど…俺がどうにか出来る事じゃねぇしな…。』
宙に舞う煙草の煙を眺めながら、そう話したかと思えば
アイツは懐から煙草の箱を取り出し、『ん、』と一言告げて、それを私に回してくる。
『とりあえず、これ吸っとけ。落ち着くからよ、』
『いや…いい。私は君みたいな不良になる気はない、』
『誰が不良だァ?俺は真っ当な好青年だ、…いいから試しに一本吸ってみろ。』
半ば強引に押し付けられたその箱から、煙草を一本取って口へと咥え
火をつけた後、少しずつ煙を吸い、肺まで落とす。
そして、口から吐き出した煙を、何となく眺めながら
『……クソ不味いな、これ。』
そう呟くと、アイツは微笑を浮かべながら
『直に慣れる…気分悪くなったら、それ吸って落ち着かせろ。煙草の一、ニ本…いつでもくれてやる、』
『…余計、気分悪くなるだけだ。遠慮しとく、___』
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作者名:雫 | 作成日時:2023年7月19日 18時