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その後、食事を済ませた二人は、帰路へと着く道中



善逸は西條に対して、ふと疑問に思っていた事を投げかける。



【 耳が聴こえないのは、不便じゃないですか 】



そう尋ねると、西條は少し何か考えるような素振りを見せた後



【 そこまで、不便じゃないな 】



【 むしろ、聴こえなくなって良かった事もある 】



【 聴きたくない事を、聴かなくて済むからな 】



そこまで書いた後、善逸へと視線を向けて



【 耳のいい君なら…私の言ってる事、分かるだろ 】



最後にそう文字を綴り、紙を手渡す。



善逸はその文字を眺めながら、西條の言葉の意味を察し



「………、…___」



少しの沈黙の後、筆を取って



【 美琴さんは…今、寂しくないですか 】



西條に対して、そう問いかける。



唐突なその問いに対し、西條が少し驚いたような表情を浮かべる中



善逸はその後も文字を書き続け、



【 確かに、美琴さんの言う通り…世の中、聴きたくない音で…言葉で、溢れ返ってます 】



【 でも…中には、泣きたくなるくらい優しい音を持った奴もいて…俺は、その音を聞くと自然と心が温かくなります 】



【 誰かの優しい音ですらも、聴こえなくなってしまうのは…寂しくないですか 】



善逸はそう綴った紙を手渡しながら、静かに西條へと視線を向ける。



西條は少し何かを考えた後、筆を取って



【 君は…私とは少し、違うみたいだな 】



善逸の問いには答えず、微笑を浮かべながら一文、そう綴った。



それ以降は筆談の会話もなく、善逸とただ肩を並べて歩き



西條は自身の屋敷が見えてきたところで、善逸に別れを告げ、颯爽と立ち去っていく。



西條が屋敷へと戻る中、善逸はその場に立ち止まり



「(美琴さんからは…少しだけ、悲しい音がする…___)」



心配した面持ちで、西條の後ろ姿をしばらく見つめていた。



一方、西條は屋敷の門をくぐり、戸を閉めた後



そのまま戸へともたれ掛かり、咥えた煙草に火をつける。



「(寂しい…か、)」



そして、先程の善逸の言葉を何となく思い出しながらも、



残りわずかとなった、煙草の箱に視線を落とし



「(後で隠に頼んで、大量に買ってきて貰うか…___)」



煙を撒き散らしながら、静まり返る屋敷の奥へと進んでいった。

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作者名: | 作成日時:2023年7月19日 18時

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