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十五になる前、全てを失い
それから育手の下で修行を積み、十六の時に鬼殺隊へと入隊した。
その後、僅か一年で『鳴柱』の称号を貰い
それから現在に至るまで、七年程柱を務めている。
「(そろそろ、死ぬんじゃないか?まァ、いいけど…)」
そんな事を思いながら煙草を咥え、宙に舞う煙をぼんやりと眺める。
就任した当初は、自分以外の柱から高鳴る…壮大な音に圧倒され
『(これは…私が一番先に、死ぬだろうな…___)』
そんな事を思っていたけれど、
気づけば、私は悲鳴嶼さんに続く年長者となり
就任当初、共に鬼殺隊を支えた柱たちの多くは命を落とした。
その中には、唯一の同期であったアイツも___
「(アイツは…どんな音、してたっけか…。)」
…今更、そんな事を思っても何の意味もない。
たとえ、今此処にアイツが化けて現れたとしても、もう…私には___
そんな事を考えていると、座り込む私に誰かの影が覆い被さり、
手に持っていた煙草の箱を取り上げられる。
顔を上げると、そこに居たのは風柱…不死川実弥。
彼は注意を促すかのようにして、口を開くが
「(何言ってるか分からないのに…、よく話しかけてくるな…実弥の奴…。)」
私は付近に転がっていた木の棒を取って、さらさらと文字を綴り
【 煙草返せ 】
その文字を実弥へと見せると、彼は私を叱るようにして何かを告げる。
私はそんな彼に対して、思わずため息をつきながら、
「(今…耳、聞こえないんだけどな…。___)」
___先日、とある鬼の血鬼術にかかってから、耳が聴こえなくなった。
勿論、その鬼は私が始末した。…けれど、何故か今もずっと耳が聞こえないままで
最初は焦りはしたが、次第に慣れていき
耳が聞こえなくとも、それ以外の感覚を研ぎ澄ませば、鬼を斬ることは容易い。
紙と筆を使えば、会話もそこまで難しくはない。
筆談での会話に慣れてしまい、ここ最近は一気に口数が減ったが…別に、問題ない。
けれど、実弥との会話だけは非常に困難で
彼は以前、文字が書けないと話していた。
だから、彼とは筆談での会話が成り立たず…今も何を話しているのか分からないが
「(どうせ…煙草吸うなとでも言ってるんだろ…、)」
そんな事を思いながら、咥えた煙草を手に取り、口から煙をふーっと吐き出した。
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作者名:雫 | 作成日時:2023年7月19日 18時