9 ページ9
胡蝶が他の隊士たちの治療の為、その場を颯爽と去っていく中
不死川は虚ろな目をした星宮に顔を向けて、
「(胡蝶の奴…、コイツに何したんだァ…?…やっぱり、アイツは怒らせると怖ェなァ…。)」
そんな事を思いながらも、不死川は星宮に「行くぞ、」と一声掛けて、蝶屋敷を後にする。
星宮は胡蝶との一件で堪えたのか、意外にも反抗する事なく、不死川の後ろを静かに着いて歩く。
不死川は道中、背を向けたまま、星宮に対して
「…そう言えばお前…下の名前なんて言うんだァ、」
そう問いかけるが、星宮は返答する事なく、ただ黙って歩き続ける。
「(無視かよ…、…まァ…そうだろうなァ…。)」
若干苛立ちながらも、答えが返ってこない事は、これまでの星宮の態度から何となく予測が付いていた。
そして、不死川が所有する風屋敷へと辿り着くと、不死川は星宮に対して
「今日からお前は…此処で、俺が面倒見てやる。…部屋は好きに使ってくれていい、」
不死川は星宮にそれだけ伝えた後、門をくぐり、ガラッと屋敷の戸を開けて中へと入っていった。
____…それから数時間後、不死川は星宮の様子を確認する為、屋敷の中を探すが彼女の姿は何処にもなく。
「(………出掛けたのかァ…?)」
そう思い、玄関の戸を開けると、門の前には星宮が静かに膝を抱えて座り込んでいた。不死川はそんな星宮に近づいて、
「何してんだ、お前…。まさか、ずっとここに居たのかァ?」
「…………、…。」
黙り込む星宮に対して、不死川はため息をつきながら
「何か気に食わねェ事でもあるのかァ、お前は…、…黙ったままだと、分かんねェぞ。」
不死川がそう話すと、星宮は呟くようにして
「……実家みたいで…嫌だ。…落ち着かない、」
星宮の返答に、不死川は困ったような表情を浮かべながらも、
「もっとこう…、…具体的に何が嫌か言ってみろォ、」
「…広い。」
「(それは…どうしようもできねェなァ…)…他にねェのか、?」
「……他…は、____」
星宮は何かを言いかけたところで、膝をきゅっと抱えて、口を噤む。
ふたたび黙り込んだかと思えば、星宮はスッと立ち上がり、不服そうな顔をしながらも、そのまま屋敷の中へと入っていく。
不死川はそんな星宮の後ろ姿に目を向けて、
「(…ったく…難しい奴だなァ…、____)」
そう思いながらも、星宮に続いて屋敷の中へと入り、戸をピシャリと閉めた。
181人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:雫 | 作成日時:2023年6月12日 2時