星屑を掴む【不死川実弥】 (ページ48)

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その後の事は、あまり記憶になくて

気づけば襖に寄りかかりながら、散らかった部屋をただ茫然と眺めていた。

父さんは去り際、失望したような目を向けて

『もういい、お前は勘当だ。二度と、星宮の門をくぐるな。』

吐き捨てるようにしてそう言われ、散々暴れた後、屋敷から去っていった。

『(部屋…随分、散らかっちゃったな…｡)』

殴られた頬が痛くない訳じゃない。

酷い言葉を浴びせられて…心が痛まない訳でもない。

…けれど、そんな自分の感情を優先するよりも

『(今日アイツ…任務で良かったな…、出会してたら…どうなってた事か……)』

…アイツの事だ。おそらく…父さんと取っ組み合いか、真剣勝負になって、歯止めが効かなくなるだろう。

そうなって、怪我でもされたら…そんな事を考えるだけで、胸が痛んだ。

それと同時に、こんな事を思ってしまうのは気の迷いであると思いたいが

『一華』

優しくて温かい…あの声が恋しくなってしまった。

今すぐにでも、名前を呼んで触れて欲しいと…そんな、らしくもない事を思ってしまう。

『(早く…帰ってこい…、…馬鹿…____)』

震える両手を何とか抑え、吐き出したい感情を飲み込みながら、崩れるようにしてその場に座り込んだ。

　

＊＊＊

翌朝、目を覚ました星宮は、鏡の方へと向かい

「(…酷い顔……、…。)」

泣き腫らした目元をみて、そんな事を思うと同時に

「(昨日…アイツの前で、泣いてしまった…最悪…。…殴り殺して記憶消してやりたい…)」

泣いている姿を見られ、屈辱的な気分に浸っていると

襖が開き、屋敷を訪れた隠が星宮に対して

「星宮様、刀の件の事で…。今、刀鍛冶の方に星宮様の刀を預けておりますので…それまでの間、こちらの刀をお使い下さい。」

そう言って渡された刀を鞘から抜くと、それは不死川と同じ緑色の刀。

星宮はその刀を持って、そのまま任務へ向かうおうとすると、隠に止められ

「星宮様の任務であれば、不死川様が代わりに行くと言って…、先程出ていかれました。」

「あと言伝を頼まれまして…、『なるべく早く戻るから、今晩出かける準備をしておいてほしい』と…。」

星宮は不思議そうな顔を浮かべながらも「…分かった、」と一言返事をし、その日は大人しく不死川の帰りを待っていた。