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(不死川 side)



後日、自室で刀の手入れをしていると、アイツが部屋へとやって来て



無言で俺の隣へと腰を下ろし、顔をまじまじと眺めてくる。



「…どうしたァ、何か用かァ。」



刀の手入れを行いながら、そう問いかけると、アイツは口を開いて



「お前、最近…調子悪くないか?」



何気ないその言葉に、刀に触れていた手がピタリと止まる。



「さっきの稽古…本調子じゃなかったろ、…何処か具合でも、悪いのか?」



そういって、少し心配そうな目を俺へと向ける。俺はそんなアイツに対して、



「……大丈夫だァ、問題ねェ…心配してくれて、ありがとなァ。」



「…それなら…いいが、…。」



アイツは俺の言葉を受けて、納得していない様子ではありながらも、それ以上深く追求はしなかった。



「(勘のいい奴だなァ、…___)」



…胡蝶のあの言葉を受けてからというもの、



俺の不安はアイツと剣を交える中で、日々募りに募っていた。



アイツと出会ってから既に一年の月日が経ち、当初『癸』だったアイツの階級は『丙』にまで上り、



柱の昇格条件である『甲』まで、あと少しとなった。



それに加え、ほぼ毎日稽古を付けているだけあって



今のアイツであれば、鬼五十体を斬る事は勿論、十二鬼月を相手に出来るような実力も十分あるだろう。



この成長は、喜ぶべき筈だというのに



「(もうこれ以上…、強くなって欲しくねェんだよなァ……)」



師として継子を育てながら、あってはならない思いを抱いてしまう。



柱になれば、今よりも危険な任務を任され、怪我は勿論…最悪の場合、命を落としてしまう。



…正直、今の俺はアイツの死に耐えられる自信がない。



今まで多くの仲間の死を目にしてきた。…戦場で命を落とすのは、大概優しい心を持った奴ばかりだった。



…アイツもそうだ。こうして今…俺の心配をし、側へと居てくれる。



「おい…その刀の手入れ終わったら、私のもやれ。どうせ暇なんだろ。」



「…はァ、?テメェの刀だろうがァ…自分でやれェ」



こうして、何気ない会話を交わせる日は、あと…どれくらいだろうか。



…出来る事なら、ずっと側に置いて、護ってやりたい。



けれど、アイツが剣を振るう時の…意思の強さが滲み出る、あの眼を見ると



「(こんな思い…口が裂けても、本人には言えねェよなァ…、…___)」



一方的なこの思いを…柱を目指すアイツに告げるなんて事は、出来る筈も無かった。

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作者名: | 作成日時:2023年6月25日 9時

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