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不死川は星宮の肩へと顔を埋めながら、
「…お前…、今日の任務…怪我してねェかァ、…?」
「怪我は…特にしてないが…、」
星宮はそう返答しながら、不死川の包帯が巻かれた腕へと目を向けて
「…そういうお前は、ちゃんと胡蝶さんに診てもらったんだな。安心した、」
「…おう…、…。」
そう返答する不死川は、何処か上の空な様子で。
その事に気がついた星宮は、自身の肩にもたれ掛かる不死川に目を向けて
「…何か…あったか、?」
落ち着いた口調でそう問いかけるも、不死川は答える様子はなく。少しの沈黙の後で、
「…別に、なンもねェよォ、…___」
そう呟く不死川の頭の中には、先程の胡蝶との会話が浮かび
『 あなたは…怖くはないですか…継子を…、彼女を…失う事が……。』
その言葉を思い出しては、顔を歪め
気づけば不死川の腕は、無意識に星宮の背中へと回されていた。
星宮はそんな不死川の様子に、何かあった事を察しながらも、聞き出そうとはせず
自身の肩へと顔を埋める、不死川の頭へ手を伸ばし
「たまには…お前の事も、撫でてやらないとな…___」
そう言って、自身がいつも不死川に撫でられている時のようにして、彼の頭を優しく撫でる。
その間、不死川は特に何も言わず、星宮の肩に顔を埋め
「なんか…アレだな、…お前撫でてると、デカい犬撫でてる時と同じ感覚になるな、…」
「………俺ァ犬じゃねェ、」
不死川はそう呟いた後、幼子が甘えてくるかのようにして、星宮の肩にぐりぐりと頭を擦り付ける。
星宮はそんな素振りを見せる、不死川に内心驚きつつも
「(…珍しいな…、まァでも…コイツも人間だし…そういう時もあるよな…。)」
そんな事を思いながら、不死川の頭をひたすら撫でた後
不死川を連れて座敷へと移り、おはぎの包みを手渡す。
「今、お茶入れてくるから…少し待ってろ、犬。」
「誰が犬だァ、……悪ィなァ…手間掛けさせてよォ。」
お茶を入れに星宮が部屋を出た後、不死川は内心
「(…何してんだ俺ァ…、…アイツに気ィ使わせて…随分、ガキ臭い事しちまったなァ…。)」
少しの反省を抱きながらも、撫でられた感覚を思い出すと、不死川の口元からは思わず笑みが溢れる。
そんな温かい感情を抱くと同時に、
「(…失いたくは…ねェよなァ…、…____)」
漠然とした不安を抱え込みながら、視線を静かに下へと落とした。
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作者名:雫 | 作成日時:2023年6月25日 9時