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そんな俺の願いは、思っていた以上にすぐ叶い
アイツの耳元で青く光るあの耳飾りを目にし、
『(きっと…大事な奴でも出来て…、ソイツから貰ったんだろうなァ___)』
今のアイツは、俺から見ても美しく成長し
根が素直で…仲間思いなアイツの周りには、よく人が集まっていた。
だから、そんなアイツに…大事な奴が出来たとしても、何ら可笑しくはない。
…もう俺が、アイツの側にいる必要はない。
そんな思いを抱きながら、アイツから目を背け、一人屋敷へと戻るが
静まり返った屋敷に戻る度、かつて出迎えてくれた…アイツの事を思い出してしまい
『(しばらく…此処に戻るのは止めるかァ…、…)』
屋敷を空ける事が多くなり、…アイツが訪ねて来ていた事には、全く気づいていなかった。
アイツから貰った手紙も、全部目を通してはいたが
生憎、俺は文字が書けない為、返事を出す事が出来ずにいた。
あとは…アイツを、名前で呼ぶ事が出来なくなったのは
「…………、…____」
此処までの思いは、アイツに告げる事が出来たものの
この事に関しては、思わず口を閉ざしてしまう。アイツはそんな俺に対して
「……何だ、早く言え。言わなきゃ…分からないだろ…、」
そう言って、視線を下へと落とす。
俺はそんなアイツのもとへと近寄り、隣へと腰を落として
「名前で呼べなくなったのは…、お前と距離を置きたいから…とか、そんなンじゃなくてよォ…」
「…お前、もう…ガキじゃねェだろォ…、だから…呼べなくなった…ってだけだァ、」
そう告げるが、アイツは全く理解していない様子で、
俺は隣にいるアイツの、煌びやかな金色の髪を掬い取り、軽く触れながら
「……綺麗に…なったなァ、___」
アイツと視線を合わせ、一言そう告げる。
アイツは一瞬目を丸くしたかと思うと、不服そうな表情を浮かべて
「お前…話をすり替えるな、何で呼べなくなったかを言え。さもないと、今此処で殴り殺すぞ。」
いつもの調子でそう告げるアイツに対し、俺は軽くため息をつきながら
「(…話…すり替えた訳じゃねェんだけどなァ…、)」
今までガキだと思ってたアイツが、いつの間にか大人になっていて
アイツを見る目が、俺の中で少し変わってしまった。
俺にとってアイツはもう…ただの庇護対象ではなく、
今までとは、また違った…対象として、意識し始めている自分がいる事に、気がついてしまった。
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作者名:雫 | 作成日時:2023年6月25日 9時