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鬼殺隊に入隊する前、俺は…家族を失くした。



入隊してからは、友を失い…仲間も失った。



この歳になるまで、多くの救えない命を目の当たりにし、



もう誰も、失いたくないと思った。…だから、事あるごとに



隊士たちに『鬼殺隊を辞めろ』と散々言い聞かせ、…少しでも、無駄な犠牲が出てしまうのを防ぎたかった。



その結果、隊士たちから恐れられはしたが、…その方が俺にとっては都合が良かった。



仮に誰かと親しくなって、ソイツに死なれでもしたら



今度こそ…自分の中で、何かが壊れてしまうような…そんな気がした。



だから、当時は特定の誰かと連む事も無ければ、



近しい存在となり得る…継子を、取るつもりも一切無かった。



…それなのに、



『___おい、お前…三徹目か何だか知らないが…、こんな所で寝るな。殴るぞ、』



気づけば、屋敷に戻ると当たり前のようにアイツがいて



『悪ィ…、…今…部屋…行くからよォ…、…___』



重たい身体を起こし、何とか立ちあがろうとするが



体制を崩し、倒れ込むところをアイツに支えられる。



『お前…相当疲れてるな…、』



アイツは呆れた様子で、ため息をつきながらも



柔らかな眼差しを俺へと向け、穏やかな口調で



『……今日も…お前が、生きて帰ってきてくれて…良かった…。』



『 …おかえり、____』



なんて事ない、そんな…ありふれた言葉だというのに



心地よいアイツの声は…優しい言葉は、耳の奥によく残る。



俺はその言葉を噛み締めると同時に、アイツの肩へと顔を埋めながら



『…………たでェ…まァ…、____』



呟くようにしてそう返し、静かに瞼を閉じる。



『おい…寝るな…。クソ重いお前の身体を、私に運ばせる気か…?…聞いてんのか、おい…起きろ___』












…もう、誰も失いたくなくて、悲しみを背負いたくなくて



周りの奴等を突き放し、独りで生きてゆこうと思った矢先



この温もりを知ってしまったら…、護りたいと思うのは勿論



この先も…ずっと、コイツの側に居たいと



一緒に生きていきたいと、…らしくもない事を思ってしまう。



…けど、その思いは…単なる俺の我儘でしかなくて、



アイツは…俺と過ごした日々を『幸せ』と、言ってくれてはいたが



幸せなんて…そこら中に転がっていて、根が素直なアイツであれば…きっと、今以上に幸せになれる。












だから、どうか…俺以外の誰かと、幸せに生きてくれ

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作者名: | 作成日時:2023年6月25日 9時

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