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気づけば…俺はアイツの肩を抱き寄せ、そう言葉を放っていた。
宇髄は一瞬驚いたような顔をした後、何故か怪訝そうな表情を浮かべており
辺りに妙な空気が流れたかと思えば、アイツが何か言いたげな様子で顔を上げ
「…っ…、泣かしたのは…、…お前だ…ッ、馬鹿！！___」
目に涙を溜めながら、勢いよくそう言い放ち
俺の手を振り解いて、一人何処かへと駆けて行く。
状況が掴めず、混乱した状態でその場に立ち尽くしていると
そんな俺の背中を、宇髄が力強く叩き
「お前…アイツにあんな顔させたままでいいのか。…早く追いかけて、アイツの涙止めてやれ。___」
その言葉を受け、立ち止まっている場合ではない事に気付かされると同時に、すぐさまアイツを追いかけるが
「(クソ…っ…アイツ…何処に行きやがったァ…)」
途中見失い、辺りを探し回っていると
何処からか啜り泣く声が聞こえ、声のする方へと足を運ぶ。
すると、そこには膝を抱えて物陰へと座り込む、アイツの姿があり
アイツは俺の気配を感じ取ると、
「………それ以上…近づいたら、殺す…____」
消え入りそうな声でそう告げ、顔を伏せる。そして、少しの沈黙の後、
「…私に…構うなと、言った筈だ…。それなのに…何で追いかけて来る…、…」
「お前は…もう、私の事なんて…どうだっていいんだろ…、それなら…こんな所まで来るな…。…放って置___」
俺はそう話すアイツの言葉を遮るようにして、
「放って置ける訳ねェだろ…、それに…お前の事を、どうでもいいと思った事だって…一度もねェ…。」
俺はそう告げた後、少し間を置いてから、ふたたび口を開き
「俺ァ…お前の事は、今でも…大事に思ってる。…お前が俺の継子だったから、そう思ってた訳じゃねェ。」
「お前が…『星宮一華』だったから、大事にしたいと思った…護りたいと思った…。…それに、俺ァ…誰よりも、お前の事を___」
「『 愛してる 』」
____この言葉を、アイツに告げるのは…これで二度目だろうか。
傍から見たら、大袈裟すぎる言葉かもしれないが
でもそれくらい、俺にとって…アイツの存在は大きかった。
以前、アイツは『自分は与えて貰ってばかり』だと、そう話していたが
与えて貰ってばかりだったのは、間違いなくこの俺の方で
アイツと出会ったあの日から、
欠けていた何かが、満たされていくのを日々感じていた。
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作者名：雫 | 作成日時：2023年6月25日 9時
