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でも…それでも、私は…____
あの時、私が感じていた幸せを…アイツにも同じく、感じていて欲しくて、
師弟関係に囚われず…今でも側にいたいと、アイツにも思っていて欲しかった。
___気づけば…私はそんな自身の思いを、目の前にいる宇髄へと、こぼすと同時に
視界が滲み、頬を伝う涙の感覚があった。
止めようとすればする程、ぽろぽろと雫が溢れ落ち
宇髄はそんな私を静かに見つめた後、周囲を見渡して
「…星宮、此処だと…隊士の目があるからよ、…移動するぞ。___」
泣いている私を気遣ってか、声を潜め、そう告げる。
そして、宇髄の手が私の肩に触れようとしたその時。
不意に誰かに肩を抱かれ、引き寄せられたかと思うと
「 オイ 」
…聞き慣れたアイツの声が、耳の奥に響く。
私の肩を力強く抱く、その手からは…ひしひしと怒りが伝わってきて
「…宇髄…、テメェ…何泣かせてんだァ…?…コイツに何しやがったァ…、___」
***
(不死川 side)
道中、何気なく歩いていると
視界に宇髄と…アイツの姿が目に入った。二人は何やら、話し込んでいる様子で
「(…何…話してンだろうなァ…、…。)」
気にはなりつつも、その視線をすぐにアイツから外した。
昨日の事もあり、もう俺には…アイツと話す資格なんてない、…そう思った。
今更…この思いを、本人に伝えても…信じてもらえないとは思うが
俺は今も昔も…アイツの事を、ずっと大事に思っている。
アイツから身を引いたのも、アイツの為を思っての事だったが
結果的に、俺の身勝手な行動で深く傷つけてしまった。
そんな俺に…今更、何が言える。
「………、…___」
静かに背を向け、その場から立ち去ろうとした時だった。
ふと、付近にいた隊士たちの話し声が耳に入り
「なァ…あれ、音柱様と翠柱様だよな…?翠柱様…、泣いてないか…?」
「だよな…、雰囲気もやばいし…。もしかして…音柱様が、翠柱様を泣かせ___」
その声を聞いて、思わずアイツの方へ振り返ると
そこには肩を震わせ、涙を零すアイツの姿が目に入った。
アイツを傷つけた俺には、もう…アイツと話す資格もなければ
今ここで駆け寄って…震える肩を抱き、アイツの涙を止める資格すらない。
そんな事は…分かっている、けれど___
泣いているアイツを、このまま放って置くだなんて事は
俺には…、出来る筈もなかった。
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作者名:雫 | 作成日時:2023年6月25日 9時